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的皪(てきれき)

「的皪」はあざやかに白く輝くさま。今年のタイトルは漱石『草枕』の難解熟語。漱石は『草枕』では「的皪と光るのは白桃らしい」、『野分』では「明星と見まがう程の留針が的皪と輝いて」、『虞美人草』では「的皪と近江の湖が光った」と使っている。

 今回も短歌は『昭和万葉集秀歌 【三】 四季・自然』(講談社現代新書・上田三四二編、昭和60年1月刊)から。作者名の後の数字は昭和何年の、或いは何年何月の発表かを示す。

 薄雪の降りし街路にアセチレンなげきのごとく点し蟹売る(阪田博義・34.1)

 s-縁側20181115
 11/5、実家の縁側の下を掃除。縁側の下には猫の侵入防止のために網が張られていたのだが、経年劣化であちこちが破れていた。網を撤去し、落葉などを掻き出す。家の西側に8畳間ほどの大きさの池があるせいか、掻き出した土が湿っているので、吸湿のためにゼオライトを敷設。

 霜ばしらくづれて出でし水光り青き万年青(おもと)の根に流れゆく (谷鼎・10.1)

 s-縁側の下補修20181115
 網を張ってもいずれは破れてしまうので、柵を製作。防腐剤を塗布した柵はフックに架けられているだけなので、掃除のときには簡単に取り外せる。ほぼ一日掛かりの仕事となり、完成は16時過ぎになってしまった。馴れていない木工作業にしてはまずまずのできと自画自賛。(柵が撓んでいるのは、ホームセンターで買ってきた板が撓んでいたから。買うときにもっと注意しないとダメだね。)

 澄みとほる朝の日射(ひざし)に冬畑の氷柱かがやき葱の秀(ほ)は燃ゆ (岩間正男・22.3)
 
 s-八つ手20181119
 11/19、夜来の雨も上がり、好天に。以下11葉は庭先にて。ヤツデ。
 
 花蘭(た)けし椿の蔭に孔雀をりいま擾乱(ぜうらん)のうつつに遠き (大野誠夫・46)

 s-水滴20181119
 
 火の国に椿咲きたり乙女らは枝ひきたわめ花の蜜吸ふ (内藤隆義)

 s-ユズ20181119
 今年は不作だったユズ。

 ひろげたる翼しづかにをさめたりさびしき鶴のただ立ちてゐる (川田順・10)
 
 s-ヒイラギナンテン20181119
 ヒイラギナンテン。

 冬雲のなかより白く差しながら直線光(すぐなるひかり)ところをかへぬ (斎藤茂吉・17)

 s-ヒイラギ20181119
 ヒイラギ。

 山の上のこの平けき湖(うみ)の面(も)に照り耀(かが)よひて風の道見ゆ(寺師治人・48)
 
 s-バラ②20181119
 バラ。

 山の間に野火の煙はほぐれつつ藍に濁りて冬山昏(く)るる (田中順二・52)
 
 s-バラ20181119
 バラ。
 
 山ふかき国に生(あ)れたる幸(さきはひ)を雪にこもりて思ふことあり (松井芒人・34)

 s-キク④20181119

 雪ののちもまだ保ちゐて朝あさに落葉する木の赤ならを愛す (上村孫作・46)

 s-キク②20181119

 雪の日のけふのしづまり椿には咲きたる紅(あか)と咲く蕾みゆ(岡部文夫・50)

 s-キク③20181119

 みんなみに鷹わたる日なり佐多岬(さたのみさき) 空の高さよ 海の青さよ (海音寺潮五郎)

 s-キク20181119
 
 むかつ尾の檜山(ひやま)杉山横ざまにしげくも雪の降りはじめたる (川合玉堂・23)

 s-JA祭20181123
 11/23、JA祭の野菜即売会に参加。サツマイモ3種、ネギ、ダイコン、ジャガイモ、シュンギクなど。NHKの朝イチ等でサツマイモが
準完全食であること、お通じの改善効果があることが取り上げられているからか、販売は割と好調で昼前に在庫補充をしたほど。試食品を持参したことも幸いした。会社関係の来場者も何人かいて、「よく似ているなとは思ったが、まさか還太郎さん本人だとは・・・」と驚かれる。(昨夜21時ごろ寝たので、2時半起床。仕方なく、ブログの製作を開始・・・。)

 風が冷たくなりました。皆さま、ご自愛下さいますよう願います。

煦々(くく)たる

 「煦々たる」は、①暖かいさま、②恵みをかけるさま。「煦々たる春日に背中をあぶって」と漱石は書いている。今年のタイトルは漱石『草枕』の難解熟語。

 今回も短歌は『昭和万葉集秀歌 【三】 四季・自然』(講談社現代新書・上田三四二編、昭和60年1月刊)から。作者名の後の数字は昭和何年の、或いは何年何月の発表かを示す。

 やうやくに海面(うなも)に湧きし鰤(ぶり)の群しぶけば網子(あみこ)ら昂(たか)ぶり競ふ (宇田道隆)

 s-菊花20181107
 これ以降10葉は庭先に咲き誇る菊・その他。菊は繁殖力旺盛で、根元から切っても来春には復活する。ほどほどなら根元から切ったりはしないのだけれど、畑にも侵入してくるので厄介。
 
 山すそにわきつぐいづみ村びとは石をたたみて清くたもてり (大野武・50)

 s-菊花20181101

 山にのぼり切なく思へばはるかにぞ遍照の湖青く死にて見ゆ (前川佐美雄・15)
 *「遍照」=広く照らしわたること。

 s-菊花②20181107

 薪塚に凝れる霜をま上より照らしてゐたる月は小さし (佐藤正憲・37.5)

 s-菊花③20181107
 
 ひっそりと白きとむらひ行きにける枯野に淡く雪降りそめつ (永井隆・36)

 s-菊花④20181107

 何にすぐ揺るるみづひきくれなゐの花ひとつづつ秋の風吹く (福田栄一46・)

 s-菊花⑤20181107

 
 何ものの瞬きならん透明の彼方はららかに降りつぐ黄の葉 (高安国世・43.1)

 s-菊花⑥20181107

 つぎつぎと飛びたつ鴨の冬鴨のみなかげ寒し首のべてとぶ (野村清・36)

 s-菊花⑦20181107
 庭のあちこちにこんな光景がある。左奥の赤いのはケイトウ。これまた繁殖力大。一番奥に見えるヒバ、ツゲ、アオキの剪定は植木屋還太郎。
 
 葛城(かつらぎ)のみねに残れる夕明かり木山草山色をわかてり (岩沙政一・47)

 s-ツワブキ20181103
 ツワブキ。

 薄雪の降りし街路にアセチレンなげきのごとく点し蟹売る(阪田博義・34.1)

  s-ツバキかな20181107
 サザンカ。

 つみあげし漬菜の上に降る雨のたそがれ行けばみぞれとなりぬ (和辻照・24)

 s-紅葉20181109
 以下は11/9の田人路。一日雨で野良仕事はお休み。雨降りではあるが、紅葉の具合を見に出かけた。明日晴れたなら、また来ようと思ったほど紅葉の真盛り。雨中の撮影なので画像補正を種々加えた。

 せきばく と ひ は せうだい の こんだう の のき の くま より くれ わたり ゆく (会津八一・15)
 *寂寞と日は招提の金堂の軒の隈より暮れわたりゆく(還太郎の推定漢字訳。招提=唐招提寺)

 s-紅葉②20181109

 草生なく荒々つづく砂礫帯遊べるに似て霧の這ひ来る (礒幾造・50.11)

 s-紅葉③20181109

 小鳥らがつるうめもどきついばみて散り敷く殻にあさあさの霜 (鈴木孝一・49.5)

 s-紅葉④20181109
 
 湿原に点なす二つと見し白の動きはじめぬあはれ二羽鶴 (田中優紀子・46.9)

 s-紅葉⑤20181109

 しぶきふる雨に樹海の中くらし咲ける椿も散れる椿も (佐藤志満・53)

 s-紅葉⑥20181109

 
 草の実のこぼれつくして冬枯れの石につめたく霜おりにけり (大井広・7)

 s-紅葉⑦20181109

 下りてゆく杉の木の間の朝鳥の声の中なる一つ斑鳩(いかるが) (宮本清胤・48.6)

 s-紅葉⑧20181109

 今日読み始めたのは森下典子著『日日是好日』(新潮文庫・平成20年11月1日発行。同30年10月20日29刷)。主人公は大学生時代から25年間茶道を習い続けている。例えば、春の移り変わりを次のように書いている。
 『春は、最初にぼけが咲き、梅、桃、そから桜が咲いた。葉桜になったころ、藤の房が香り、満開のつづじが終わると、空気がむっとし始め、梅雨のはしりの雨が降る。梅の実がふくらんで、水辺で菖蒲が咲き、紫陽花が咲いて、くちなしが甘く匂う。紫陽花が終わると、梅雨も上がって、「さくらんぼ」や「桃の実」が出回る。季節は折り重なるようにやってきて、空白というものがなかった。』
 
 雨の音については、次の通り。
 『十一月の雨は、しおしおと淋し気に土にしみ込んでいく。同じ雨なのに、(六月の雨とちがうのは)なぜだろう。あ ! 葉っぱが枯れてしまったからなんだ・・・。六月の雨音は、若い葉が雨をはね返す音なんだ ! 雨の音って、葉っぱの若さの音なんだ。』

 皆さま、11月も半ばに差し掛かってきます。ご自愛願います。 

拖泥帯水(たでいたいすい)

 「拖泥帯水」は苦しみにまみれている人を、慈悲の心を持って共に生活することで救済すること。今年のタイトルは漱石『草枕』の難解熟語。

 今回も短歌は『昭和万葉集秀歌 【三】 四季・自然』(講談社現代新書・上田三四二編、昭和60年1月刊)から。作者名の後の数字は昭和何年の、或いは何年何月の発表かを示す。

 朝富士の紺青に澄める頂に茜及びて起伏見え初む (葛原繁・39.10)

 s-パープルスイートロード③20181017
 先ずはサツマイモの収穫状況。ご覧の通りの豊作。品種は「パープル スイートロード」。

 天城嶺(あまぎね)は 母の山かも。常仰ぎ しかも忘れてゐつつ 心底(した)恋ふ (穂積忠・30)
 
 s-パープルスイートロード20181017
 割と大きさも揃っている。柔らかい土なので、スコップを差し込んで、その柄を手前に押し下げると、ゴソッとサツマイモが浮き上がってくる。あとはツルを持って引き上げるだけ。

 おのづからまな鶴なべ鶴棲み分けて川越えし田に群るるなべ鶴 (木田節子・43.3)
 
 s-シルクスイート20181018
 こちらは「シルクスイート」。大きさが不揃いであるばかりか、長芋かゴボウのような長尺品もあり、掘り起こすのは難行苦行。こんな不揃いなのは初めてと妻が嘆く。幸いにして他の列はこれほど不揃いではない。
 もう一つの問題は売行き不振。JAの直営販売店3ヶ所、イオンのJAコーナーなど計4ヶ所で販売しているのだが、思ったほど売れない。義母がお世話になっているデイ・ケア施設や知り合いの料理店、その他に20~30kgほどを無償提供。更には畑の脇を通りかかった知人にも配布。「撒き餌」効果があるいいのだが・・・。来年は好物の芋焼酎でも作ろうかな?

 雲は地に結ばれてゐてその黒き影を錘(おもり)のごとく曳きをり (水上正直・51)

 s-ケイトウ20181017
 変わった色のケイトウ。

 散る花のうへにまた散る山茶花のさながら白き夕ぐれのとき (佐藤志満・53)

 10/23、都内で会食、6時半開始。5名で大いに盛り上がり、お店の方に「もう11時になるので閉店したいのですが・・・」と注意されるまで、そんな時間になっているとは全く気が付かなかった。茨城にいたときのお客様がお相手。以下の写真は24日春日部内牧公園で。今頃咲くの? と再三思わされた花が多かった。
 
 s-ナノハナ20181024
 ナノハナ。 

 十年(ととせ)経てふたたび来れば移りゐる雲ひとつ那智の滝のしづかさ (佐藤佐太郎・45)

 s-ユウゲショウ20181024
 ユウゲショウ。

 飛火野(とぶひの)に小雨ふる日は鹿の群ひとかたまりとなりて濡れゐつ (市橋りえ・44.11)
 *「飛火野」=奈良市外の東方を占め、興福寺・東大寺・春日大社・国立博物館と一体となり、さらに若草山から春日山原始林までを取り込んで広大な公園となっている。

 s-白い花20181024
 ハナイバナ。 S先輩からご教示有り。青字は以下同様。

 何に触るる音としもあらず揉みあひて谷のぼりゆく夜の風音 (中山礼治・46.6)

 s-ホトケノザ20181024
 ホトケノザ。

 竹は内部に純白の闇育て来ていま鳴れりその一つ一つの闇が (佐佐木幸綱・51)
 
 s-白い花②20181024
 タネツケバナかな。

 庭土の白く乾きて八つ手咲くこの宵頃は星冴えて見ゆ (淵浩一・5)

 s-黄色の花20181024
 ハキダメギク。

 墓捨てし吾を責むると外(と)に立てば氷雨は過ぐる相模野の丘 (前田透・47.3)

 s-紫の花20181024
 ノアサガオ。

 避難小屋の石置く屋根のあらはれて信濃側より霧はれむとす (亀村佳代子)

 s-田植え済みかな20181024
 水を入れれば田植え後の姿の田んぼ。

 山深く音にたちくる秋の雨つるうめもどきのくれなゐ寒し (渡辺直吉・14.9)

 s-白い花③20181024
 ヒメジオンかな。

 夕日かげかげりし原によごれたる山羊ひとつ居て風に吹かるる (堀内通孝・16)

 s-不明20181024

 夕陽さす黄葉(もみぢ)の谷に鳴きかへる猿(ましら)の声は山にひびきぬ (丸田嘉雄・6.4)

 s-白い花④20181024

 ゆく秋のわが身切なく儚(はかな)くて樹に登りゆさゆさ紅葉(こうえふ)を散らす (前川佐美雄・15)

 s-ヘクソカズラ20181024
 ヘクソカズラ。

 よりそへば壁も柱もわが影もひえびえしめる秋の夜の雨 (九條武子・3.2)

 s-ノコンギクかな20181024
 ノコンギクかな?
 
 雷鳥の立ちし岨路(そばぢ)に杖とめて見放(みさ)くる尾根を雲ながれゆく (鈴木将剛)
 
s-クズの葉20181024
 クズの葉。
 
侘しきとき侘しさ誘ふ檻の中に孔雀はよごれし羽根をひろげぬ (桜井鬼怒夫・28)
 
 s-クコ20181024
 クコ。 

よひよひの露ひえまさるこの原に病雁(やむかり)おちてしばしだに居よ (斎藤茂吉・25)

 s-キバナコスモス2018124
 キバナコスモス。

 山空をひとすぢに行く大鷲の翼の張りの澄みも澄みたる (川田順・15)

 s-お茶の花20181024
 お茶の花。

 柵あり牧舎あり烏なきて声はこだまに帰ることなし (土屋文明・10)

 s-イヌタデ20181024
 イヌタデ。
 
葉脈の硬き薊(あざみ)を食(は)み終えし兎はしずかにあかき眼ひらく (小松北溟・49.11)
 
 s-アザミかな20181024
 アザミかな? ノゲシ(別名ハルノノゲシ)。

 ひと房の葡萄を持てばきみが手に流るるごとく秋の紫 (福田栄一・23.9)

 s-テリハノイバラとクズの葉20181024
 テリハノイバラとクズの葉。

 今日(10/27)は8時前後にやや強い雨があり、畑が濡れてしまったのでサツマイモ掘りはお休み。昨夜も会食がありややお疲れモードの還太郎には、「干天の慈雨」。全部掘り尽すには、あと5日ほどかかるかな。足腰が鍛えられる。
 皆さまもお元気にお過ごし願います。

寸縑(すんけん)

 「寸縑」。「縑」は目をこまかく固く織った絹布。訓読みでは「かとり」。固織りの約。わずかな幅の画布ということかな。『草枕』の中では、前号で紹介した「尺素」と合わせて「尺素を染めず、寸縑を塗るらざるも、われは第一流の大画工である。」と使われている。(今年のタイトルは漱石『草枕』の難解熟語。)

 今回も『昭和万葉集秀歌 【三】 四季・自然』(講談社現代新書・上田三四二編、昭和60年1月刊)から。作者名の後の数字は昭和何年の、或いは何年何月の発表かを示す。

 秋ながらうちつけに日の照らすなか山の蜻蛉(あきつ)は人を怖れず (田谷鋭・53)
 *「うちつけに」=突然に。

 s-サフラン20181002
 イヌサフラン?

 うちけぶる銀河の位置は移りたり大地傾きてゆくけはひあり (服部忠志・22)

 s-発芽したタマネギ20181007 (1)
 発芽したタマネギ。縫い針ほどの背丈。約3,000粒を蒔いた。

 塩田のむかうに見えぬ海ありてマストの赤き旗ひるがへる (坂本孫一・36.8)

 s-柿20181007
 渋柿。
 
 思ひ切り枝はらわれしせんだんの幹黒くして秋の雨ふる (森島康与・50.11)

 s-ピーマン20181007
 ピーマン。

 雁一列(ひとつら)真上の空に近づけり荒くして徹る声きこえつつ (川田順・10)

 s-トウガラシ20181007
 トウガラシ。

 首垂れて草食み移る緬羊の日のあたる方にいつか群れゆく (島田幸造・33.11)

 s-シュンギク20181007
 シュンギク。稚苗を定植するのだが、活着率は非常に高く、虫もつかない。

 桑の木の踝(くるぶし)は祈りの列に似てわが行く赭(あか)き道に続けり (金井秋彦・53)
 
 s-シソ20181007
 シソの実。

 根源のごとく謐(しづ)けき月の出に太樹(ふとき)の黐(もち)はくらくかがやく (加藤知多雄・48.8)

 *「黐」=モチノキ科モチノキ属の常緑高木。葉がクチクラ層と呼ばれるワックス層に覆われていることから塩害に強い。暖かい地方の海辺に自生する。
 
 s-コスモス20181007
 コスモスとサツマイモの葉。

 静かなる雲の流れと思へるに木の間を下る霧は速しも (岡井弘・8.7)

 s-オクラ20181007
 オクラ。

 信濃川の川原にみれば弥彦山は孤(ひと)つ山かも天そそり立つ (小泉苳三・8)
 *「弥彦山」=越後平野の日本海沿いに連なり、弥彦山塊と呼ばれる山並みの主峰。標高634m(スカイツリーと同じ高さ ! )。標高はあまり高くないが、北に位置する多宝山との双耳峰で秀麗な山容で知られる。

 s-カボチャ ダークホース20181007
 カボチャ(品種名はダークホース、味噌汁に入れてもおいしい)。カボチャの下敷きになっている白いプラスチックの成型品は「座布団」、「台座」、「フルーツ枕」とか言われる。太陽光を下部から反射させカボチャの底部着色不良を防止。また、土・水からの病害防止効果もあるとか。

 しぬ竹の庭べに座り日のうつり冬めくとのみ我はおもはむ (室生犀星・3.2)

 s-生垣20181007
 アオキの生け垣の剪定。電動バリカンが活躍。右手奥は生垣ではなくブロック塀。手前の赤い植物はシソ。あとは全てサツマイモ(4種)。

 月明き河を渡りてみちのくのあがたにさびし行く雁の声 (山田四郎・11.1)
 s-メマツヨイグサかな20181009
 ここから5葉は海岸近くで。メマツヨイグサ。(7時26分に撮ったのだが、待宵草?) コマツヨイグサ。S先輩から御教示あり。青字は同様。

 遠空に山かさなれるあたりまで静かさつづく峠くだりをり (村田利明・50)

 s-なにかな20181009
 クコ。 

 突風は中天に最も烈しきか雁の列の乱れなかなか復(かへ)らず (田中譲・43.11)
 
 s-ダンドボロギクかな20181009
 アレチノギクかな。アキノノゲシ。

 (はり)のごとく光は水に透りゆく渓ふかく秋もをはらむとして (岩上とわ子・31)

 s-セイタカアワダチソウ20181009
 セイタカアワダチソウ。

 乾反(ひぞ)りたる柿の落葉のあるものは陶器のごとき光沢をもつ (杜沢光一郎・51)

 s-紫の花20181009
 調査中。タイカンマツバギク。

 ほのかなる 硫黄のかをり 吹きかよへ 芳が平の 秋風のうち (三好達治・9) 

 s-怖い訪問者20181008
 怖い来訪者。

 まさびしき空間をくだりぎんなんの鬱金(うこん)の落葉地に吸はれゆく (伊藤麟・46)

 s-怖い訪問者②20181009
 続・怖い来訪者

 松風のおと聞くときはいにしへの聖(ひじり)のごとく我は寂しむ (斎藤茂吉・25)  

 s-ショウガ 龍馬20181009
 ショウガ。品種名は「龍馬」。中央下部が種芋で、これで一株分。

 満月を阻(はば)む地球の冥(くら)き影巨(おお)いなるかも宙に泛(うか)びて (児玉和子・47)

 s-パープルスイートロード20181009
 サツマイモ。品種名は「パープル スイート ロード」。水洗い直後はこんなに鮮やかな色。まだ本格的な収穫は始めていないが、まずまずの出来のようで一安心。

 道の辺の高萱に鳴く馬追は昨日(きぞ)の夕べも此処に鳴きゐし (上田三四二・42)

 s-コスモス20181009
 もう一度コスモス。

 畑仕事や庭木の剪定、裏ヤブの伐採で日々暮らしているが、大げさに言えば地球の自転に合わせた生活であり、季節の移り変わりを肌身で感じる。心地よい。
 昨日は好天。急を要する農作業もないので、母畑温泉・八幡屋の昼食・温泉付きコース。片道70km程度のドライブ。日帰りコースのお客さんはは3、4組のようで、屋内・露天風呂、麦飯石サウナはほぼ専有状態。平日に使うお金のパフォーマンスは週末の何倍かな? 往復ともなるべく高速道路は使わないようにして、田畑の見学。稲刈りが例年より遅くなっているような気がする。だが、夕陽に輝く稻田もよかった。
 それで終わればいいおじさんなのだが、帰宅して18時から旧知の「おじさんたち」と飲み会。まあ、十分盛り上がったけど20時半帰宅。自分も含めて「おじさん」達は『2時間飲んだら帰って寝たい症候群』では?
 
 皆さま、この季節をお楽しみ願います。  

尺素(せきそ)

「尺素」=(一尺の絹布の意で、文字を書くことに用いたことから)短い手紙。今年のタイトルは漱石『草枕』の難解熟語。

 今回も『昭和万葉集秀歌 【三】 四季・自然』(講談社現代新書・上田三四二編、昭和60年1月刊)から。作者名の後の数字は昭和何年の、或いは何年何月の発表かを示す。

 あきあじが川上にたどり着く頃か朝々の水つめたくなりぬ (加藤良秋・28.2)
 
 s-朝露20180928
 9/28、春日部にて早朝の散歩。夜来の雨が上がり、植物にはたっぷりの水気が。

 秋の気の裂けて鋭声(とごえ)に百舌鳥(もず)なけばももくさの実もしまるとききぬ (太田水穂・8)

 s-朝露②20180928

 秋の夜の井戸に音あり深奥のはるけき銀河汲まれいるなり (馬場あき子・47)

 s-朝露③20180928
 シロザ(S先輩からご教示有り。以下、青字は同様。)

 あらあらしき野分吹きつつ庭畑にこぞりたちたる葱苗(ねぎなえ)ひかる (板宮清治・49.11)

 s-朝露④20180928

 (いにしへ)もかくありつらむ熊野路の磯の岩間にこぼるる椎の実 (大井俊次・50)

 s-朝露⑥20180928
 オオニシキソウ。

 海の湧く音よもすがら草木と異なるものは静かに睡(ねむ) (佐藤佐太郎・45)

 s-朝露⑦20180928
 たぶんツクシハギ。

 おもほへば海の心のやはらかき方(かた)に伸びて来て岬濡れをり (安永蕗子・37)

 s-朝露⑧20180928
 イヌガラシ。

 カナカナは鳴かずなりにし昨日より野に立つ風の澄みて秋づく (八杉龍一)

 s-昭和記念公園20180928

 9/28午後、昭和記念公園(東京都立川市・昭島市)へ。東京ドームの約40倍の敷地。広々としていて気持ちいい。

 かへり行く先も檻にて芸終へし猛獣どもはゆるく歩めり (岸本千代・43)

 s-昭和記念公園④20180928

 寒蝉(かんぜん)の声ゆるやかに外(そ)れゆきてひつそりと秋は老楠(おいくす)にくる (野上久人・48)

 s-昭和記念公園③20180928

 車道より高処(たかど)に見えて迫田(さこだ)あり空につづきて稲の輝く (広森清・48.9)

 s-昭和記念公園②20180928
 「みんなの原っぱ」。高さ20m超の大ケヤキは同公園のシンボルツリーとか。

 
 秋雷の絶えたるのちの冷々と卓に黒耀の粒なす葡萄 (馬場あき子・47)

 s-ソバ20180928
 ソバ。

 台風にのりて琉球の蝶こしと小さき記事あり秋となる空 (富山繁子・50)

 s-ススキ20180928

 ちる花はかずかぎりなしことごとく光をひきて谷にゆくかも (上田三四二・50)

 s-キンモクセイの大樹20180928
 キンモクセイの大樹。満開の花。

 ひぐらしの一つが啼けば二つ啼き山みな声となりて明けゆく (四賀光子・29)

 s-キバナコスモス20180928
 キバナコスモス。

 拾ひきて夜の灯に愛(お)しむ秋蝉のあかがねいろのぬけがらひとつ (杜沢光一郎・51)

 s-昭和記念公園⑤20180928
 日本庭園にて。

 9/26から3泊4日で春日部の自宅へ。26日は都内で劇団四季の「キャッツ」を観た。妻は大喜び。
 27日は妻の掃除の邪魔にならぬよう、宮本輝の『田園発港行き自転車』上下巻を読む。やっぱり宮本輝はいい。近所のTSUTAYAで『錦秋』、『星宿海への道』も購入。
 29日は春日部~坂東~つくば~土浦~行方~大洗~日立経由でいわきへ戻った。全て一般道。あいにくの雨ではあったが、サツマイモ・キャベツ・白菜等々の畑を眺めるのが目的。17時半頃から、海上を走る6号国道日立バイパスを北上。町の灯りがきれいだった。
 
 台風24号はかなり強烈とのこと。皆さま、どうぞご安全に ‼

蜀犬日に吠ゆ(しょくけんひにほゆ)

「蜀犬日に吠ゆ」 = (蜀は山地で雨の降ることが多く、太陽の出ている時間が少ないので、日が出ると犬が怪しんで吠えるということわざから) 無知のために、あたり前のことに疑いを抱くことのたとえ。見識の狭い人が賢人のすぐれた言行を疑い、非難するたとえ。 (今年のタイトルは漱石『草枕』の難解熟語。)

 今回の短歌も『昭和万葉集秀歌 【三】 四季・自然』(講談社現代新書・上田三四二編、昭和60年1月刊)から。作者名の後の数字は昭和何年の、或いは何年何月の発表かを示す。

 うちひびきひたと地を打つ秋雨の俄(にわか)に降りて心すがしき (尾山篤三郎・7.10)

 s-ハギ②20180913
 以下3葉は9/13、庭先にて。ミヤギノハギ(S先輩からご教示有り。以下、青字で記載)。

 雲ひらひら月の光りをさへぎるはしら鷺よりもさやけかりける (太田水穂・8)

 s-ハギ20180913
 シラハギ。

 くらがりに潮の香はこぶ風ありて風の彼方の遠き潮騒(森岡正・30)

 s-ダリア20180913
 咲き残りのダイア。

 くれなゐのトマトを愛(いと)しむ夕の卓いのち鮮やかに生きてゆきたし (横山日出時・23.11)

 s-黄色の花③20180923
 以下の写真は9/23、田人路で。キンミズヒキ。

 黒川の川原の石に尾を見せて鳴く鶺鴒は嬬(つま)を呼ぶらしも (広瀬民子・7.8)

 s-白い花20180923
 ヒメジョオン。

こほろぎも終りにちかき秋ぐさの濃きむらさきの花揺(ゆれ)やまず (結城信一・51)
 
 s-赤い実20180923
 トチバニンジンの果実。

 此処にのみ秋の光のまぶしきやけざやかに咲く曼殊沙華の群 (鳥居文子・26.1)

 s-小さな白い花20180923
  直径3mmほどの花。シソではないよね? ゆっくり歩かないと目に留まらない。 ヒメジソ。

 椎の葉にながき一連の風ふきてきこゆる時に心は憩ふ(佐藤佐太郎・27)

 s-黄色の花②20180923
 キツネノボタン。

 しやがの葉に月の照れるは寂かにて庭は今年の冬に入り行く (長門莫・46)

 s-ミズヒキソウ20180923
 ミズヒキ。

 秋分の日の電車にて床にさす光もともに運ばれ行く(佐藤佐太郎・27)

  s-黄色の花⑤220180923
 キツリフネを逆さまにしたような花。花顎は食虫植物のよう。路肩に群生していた。 キバナアキギリ。

 杉谷に迫りて咲ける蓼(たで)の花はつかににほふそのくれなゐよ (田中璃津子・19.1)

 s-ピンクの花20180923
 アキノウナギツカミかな?

 立山が後立山(うしろたてやま)に影うつす夕日の時の大きしづかさ (川田順・15)

 s-なにかな20180923
 チヂミザサ。

 月あかり水脈(みお)引く雲の波だちて夜空はすずし水のごと見ゆ(北原白秋・9)

 s-トンボ20180923
 アキアカネ。

 ふり仰ぐ槍のいただきは遥かなる空の深みに澄み入りて見ゆ (大悟法利苳雄・16)

 s-オカトラノオかな20180923
 オカトラノオ? イヌショウマ。

 ふるさとの野べの光や秋くさの実のはじけとぶ音は澄みつつ (阿部知二)

 s-ウドかな20180923
 セリかドリゼリ? ちょっと花期が違うのだけど・・・。 シラネセンキュウ。

 みづからを恃(たの)み生きよと蟋蟀のをさなきこゑのきこゆ寝覚に(田谷鋭・33.11)

 s-紅葉の始まり20180923
 紅葉の始まり。

 涼しくなりました。風邪などにご注意願います。皆さま、お元気で❣ 

隨縁放曠(ずいえんほうこう)


「隨縁放曠」は何事も縁にまかせて自由に振舞い、物事にこだわらないこと。(今年のタイトルは漱石『草枕』の難解熟語)

 今回の短歌も『昭和万葉集秀歌 【三】 四季・自然』(講談社現代新書・上田三四二 編、昭和60年1月刊)から。作者名の後の数字は昭和何年の、或いは何年何月の発表かを示す。
 
 悲しみを窺(うかが)ふごとも青銅色(せいどう)のかなぶん一つ夜半に来てをり (宮柊二・23)
 
 s-1オクラ20180907
 オクラ。野菜の花の中で一番きれいだと思う。

 神のおそれひたにおもひつ葉ごもりにせみしぐれせる日ざかりをゆく (三島由紀夫・17.12)

 s-2ニラの花20180907
 ニラとセセリチョウ。 (S先輩からご教示あり、以下の青字も同様。)

 忘れゐしものの心地に佇ちて聴く夕日の丘のかなかなの声 (太田青丘・25)

 s-3キアゲハ20180907
 モミジアオイとキアゲハ。

 日照雨しばしば草に降りしかば今日の日暮のかなかなきこゆ (植木正三・31)

 s-4タイカンマツバギク20180907
 タイカンマツバギク(耐寒松葉菊)。

 那須野路は秋近みかも煙草の葉摘まれて畑のあらはになりぬ (蓮実彊・24.10)
 
 s-5フランスギク20180907
 フランスギクかな?

 月冴ゆるこよひは雲のゆきかひのはや秋づくと夫(つま)がいふかも (北見志保子・25)

 s-6酔芙蓉①201809071116
 スイフヨウ(酔芙蓉)、11時13分。夕方に赤みを帯びてくるから「醉い」芙蓉。還太郎と同種。

 川に沿ひ山へちらばる町の灯をぬらし滲(にじ)ましふる小夜(さよ)しぐれ (川合玉堂・21.1)
 *「小夜しぐれ」=夜に降る時雨。

 s-7酔芙蓉②201809071238
 スイフヨウ、12時36分。

 あらざらむのちを思ふといふならね落葉の上に落葉つもりぬ (大井広・27) 
 *「あらざらむのち」=死後。

 s-8酔芙蓉201809071519
 スイフヨウ、15時19分。
 
炉の端(はた)にこほろぎ一つわが家にすぎたるものの如く鳴き澄む (木島冷明・38)

 s-9ダリア20180907
 ダリア。 ヒャクニチソウ。

 二見の浦朝靄(あさもや)遠く晴れそめて神代のままの天つ日のぼる (井上哲次郎・18.12)
 
 s-10咲き残りのダリアの花に20180907
 キアゲハ。

 あかつきのまだ暗きなかを目覚めゐぬこの世の鳥は地(つち)の底に啼く (前川佐美雄・22)

 s-11咲き残りのダリアの花に②20180907
 セセリチョウ。

 沿いてゆくゆふあかり田にそそぎ入る水はしづかに萍(うきくさ)ながす (山本友一・28)

 s-12ケイトウ20180907
 ケイトウ。

 たましひをふかく吸ひ込む夕暮やはなだの色ぞたゆたひにける (尾山篤二郎・36)
 *「はなだの色」=うすい藍色。
 
 s-13黄色の花20180907
 カタバミ(アカカタバミとも)。

 椎の葉にながき一連の風ふきてきこゆる時に心は憩ふ (佐藤佐太郎・27)
 
 s-14黄色の花②20180907
 カタバミ。

 わが踏める地平の果てに沈む日を信濃より来てなつかしみ見る (窪田空穂・26)

 s-15ツユクサ20180907
 ツユクサ。

 うつしみに何の矜持(きょうぢ)ぞあかあかと蠍座は西に尾をしづめゆく (山中智恵子・32)
 *「矜持」=誇り。

 9月8日の午後から土浦・上野へ2泊3日の小旅行。友人たちと夜の飲み会2回、昼食会1回。10日昼にいわきへ戻った。以下の写真は土浦市で撮ったもの。

 s-レンコン田20180909
 収獲が始まったレンコン田。軽トラが何台も見える。霞ヶ浦の向こうは土浦市街。

 なく鳥は御堂へだてしおく山の杉の木間(このま)にあつまるらしも (岡麓・32)
 
 s-紫の花20180908
 ツルマメかな?

 槌音にはたとやみたる蟋蟀(こほろぎ)のまた鳴きつぐを待てばひそけし (塚原嘉重・32)
 
 s-ミゾハギ20180908
 ミソハギ。

 秋刀魚の詩(うた)子にきかせつつわが家の青き蜜柑の酸(す)をしたたらす (番場美津子・32.10)
 *「秋刀魚の詩」=佐藤春夫の「秋刀魚の歌」。

 s-ヌマトラノオ20180909
 ヌマトラノオ。

 いま読んでいる本はドナルド・キーン著・金関寿夫訳『百代の過客』上巻(朝日選書・1984年7月刊)。実は1988年刊の『続・百代の過客』上下2冊を同年に買って読んでいる。読み終えて「続・・・」であることに気づいたが、それから30年、「続・・・」でない方も読みたいと時々は思い出したりしていたが、先週Amazonで購入。
 『百代の過客』では僧円仁の『入唐求法巡礼行記』から川路聖謨の『長崎日記』について、『続・百代の過客』では村垣淡路守範正の『遣米使日記』から永井荷風の『新帰朝者日記』について評論。

 皆さま、御機嫌よう❢

閑人適意(かんじんてきい)

「閑人」は特にすることのない、暇な人。または、風流な人。「適意」は思うままに振舞うこと。(今年のタイトルは漱石・『草枕』の難解熟語)

 今回の短歌は『昭和万葉集秀歌 【三】 四季・自然』(講談社現代新書・上田三四二 編、昭和60年1月刊)から。作者名の後の数字は昭和何年の、或いは何年何月の発表かを示す。

 今日は8/30。この何日か、いわきではめったにないような強烈な雷雨がある。朝晩は大分涼しくなった。晩夏と初秋のせめぎあい。しばらくぶりに田人路へ。林道を2時間ほどドライブ。冷涼な林間は快適。秋の気配。

 滝しぶきかかれるそこら一めんの藺草(いぐさ)の色の青きすがしさ (金子薫園・3.7)
 
 *「藺草」=イグサ科の多年草。湿地に生える。茎を畳表などに用いる。

 s-森林20180830
 
 山ふかく細き流れのせくところゆすられている虎杖(いたどり)の花 (今井邦子・6)

 *「せくところ」=せばまっているところ。「虎杖」=タデ科の多年草。若芽はウドに似。紅色の斑点がある。夏、淡紅色、または白色の花を穂状に開く。若芽を食用とし、根は薬用とする。

 s-森林③20180830

 うす紅き枝はかくれて しみじみと ははきの花も咲きそめりけり (東城士郎・44)

 *「ははき」=帚木(ほうきぎ)。アカザ科の一年草。夏、淡緑色の細花をつける。

 s-森林②20180830

 わが心かすか明るむ思ひして宵の衢(ちまた)に蛍を買ひぬ (岡井弘・7.8)

 s-チョウ20180830 (1)
 あいにく側面しか撮れなかったアゲハチョウ。

 かぐはしのみやまのきのこ籠(こ)にもらば羊歯(しだ)につつみてねもごろにせむ (小川千甕・2.4)
 
 *「かぐはしの」=かぐわしい香りがする。「ねもごろに」=ていねいに。

 s-キノコ20180830

 ゆふ闇の空をとほりていづべなる水にかもゆく一つ蛍は (斎藤茂吉・15)

 s-キノコ②20180830

 うす紅のつりふねさうの花のゆれやぶかげに見て行きすぎかねつ (熊谷武雄・9.11)
 
 *「つりふねさう」=釣舟草。ツリフネソウ科の一年草。山麓や水辺に自生し、秋、茎の先にホウセンカに似た紅紫色の花をつるす。

 s-ツリフネソウ20180830
 ツリフネソウ。

 夕立の雨うちふれり庭のへにひとつの蝉の啼きとほるこゑ (土田耕平・8)

 s-なにかな20180830
 ノダケ(S先輩からご教示有り。以下の青字も同様。)

 秋は来ぬうしろの山の葛の葉の葉うらさびしくもなりにけるかな (谷崎潤一郎・52)

 s-なにかな②20180830
 ダイコンソウ。

 蟋蟀(こほろぎ)の音(ね)に鳴くころとなりにけり夜はすがらに蟋蟀ぞ鳴く (堀内通孝・16)
 
*「夜はすがらに」=一晩中。

 s-ホタルブクロ20180830
 ホタルブクロ。 ツリガネニンジン。

 稲原の早生穂(わせほ)にしろく照る月は夜ごとに明し山の峡(かひ)にも (中村憲吉・9)

 s-ホトトギス20180830
 ヤマジノホトトギス。
 
 薄紙の中に蛍を光らせてたからのごとく子は持ちまわる (小田清一・11)
 
 s-ホトトギス②20180830
 ヤマジノホトトギス。

 雲母雲(きららぐも)薄う漂ふまなかひの秋をはるかに駆ける鳥かも (安西冬衛・2.11)

 *「雲母雲」=雲母のような薄雲。

 s-薄紫の花20180830
 ヤマハッカ。

 白菊はただつつましき花ながら月のてらせばたけたかくみゆ (橋田東声・10)

 s-白い花②20180830
 ゲンノショウコ。

 あかつきの蝉のひとこゑが諸声(もろごゑ)を誘ふあはれをききとめにけり (吉野秀雄・22)
 
 *「諸声」=和して発する多くの声。

 s-黄色の花②20180830
 オミナエシ。

 閼伽桶(あかおけ)に捧げし秋の七草ははかなきまでに清(すが)しかりけり (青柳競・28)

 *「閼伽桶」=仏に供える水を汲みいれる手桶。
 
 s-白い花20180830

 昼しぐれ降り過ぎたれば白萩は下枝(しづえ)の花をあまた散らせり (君島夜詩・10)

 s-黄色の花20180830
 オトギリソウかな? キンミズヒキ。

 秋澄みて散りのこりたる花蓮(はなはちす)とよみはつたふ広き池の上 (吉田正俊・16)

 *「とよみ」=どよめき。

 s-ソバ2010830
 白く見えるところはソバ畑。手前の水田の周囲にイノシシ除けの電線が張られており、ソバ畑には近づけなかった。

 いわきに来たら、昼は畑仕事や実家の裏ヤブの伐採等々の力仕事。よって晩酌をするとすぐ眠くなってしまう。そんなことで暫く本を読んでいなかった。こりゃあいかんと思い、大好きな葉室麟の作品でまだ読んでなかった『あおなり道場始末』(双葉社)を入手。葉室麟の作品にしては珍しく「痛快 ! エンターテインメント時代小説」。一日で読了。その勢いのまま、何年もツンドク状態だった北方謙三の『史記・武帝紀』全7冊(角川春樹事務所)に取り掛かり、悪天候の日が続いたこともあって1週間で読了。まあ、スーパーマンが活躍する劇画みたいなものと言えないこともないが、始皇帝と並び比較される武帝の武帝たるところ、その孤独や逡巡と決断、武帝に仕える官僚や軍人の苦悩等々、北方謙三に引き回されるように読んでしまった。 
 次いで、社会思想家・佐伯啓思の『死と生』(新潮新書)。この類の本には珍しく、何のことかさっぱり理解できないなんてことは書いてない。簡単に言えば、「死は誰も経験していないのだから、誰もわからない。誰もわからないことを心配しても意味がない。ただ、死は避け得ないのだからこそ、生を充実させよう」ということ。

 皆さま、ご機嫌よう ❢ 

楮毫(ちょごう)


「楮毫」は紙と筆の意。「楮」(こうぞ)は和紙の原料となる植物。「毫」は筆の穂先。(今年のタイトルは漱石・『草枕』の難解熟語)

 今回は、過去の写真から涼しげなものを選んでブログを作った。短歌は『昭和万葉集秀歌 【三】 四季・自然』(講談社現代新書・上田三四二 編、昭和60年1月刊)から。作者名の後の数字は昭和何年の、或いは何年何月の発表かを示す。

 (あかとき)とおもふばかりにあかるきは月のひかりのさしそめにけむ (藤川忠治・31)

 s-江竜田の滝
 江竜田の滝(4葉)

 海
 海に向く窓より海はみえなくに甍(いらか)の上にひくき岬山(さきやま) (五味保義・16)

 s-江竜田の滝①

 かたまりて昼顔咲ける砂山をめぐりて潮の満ちくる音す (中嶋真珠・10.9)

 s-江竜田の滝③

 磯に寄せてきほひ脹(ふく)るる大き浪ひかりを巻きて打返りたり (杉浦翠子・3)
 
 s-江竜田の滝②

 渦なせる逆さ白波はひろごりて押しうつりゆく潮ゆたかなり (松田常憲・7)

 s-四時川渓谷
 四時川渓谷(3葉)
 
 兄島を榜ぎ回(こぎた)み行けばちちのみの父島見えつ朝明(あさけ)の海に (中島敦・35)
 *「榜ぎ回み」=船を漕ぎめぐり。「ちちのみの」=「父」にかかる枕詞。

 s-四時川渓谷②

 立山の外山(とやま)が空の蒼(あお)深み一つの鷲の飛びて久しき (川田順・15)

 s-四時川渓谷③

 山頂に雷鳴ありて幾度か保安器を撃ち青き火を放つ (新田次郎)

 s-小浜海岸
 小浜海岸

 三原山噴くにかあらむ御神火の常ことなりて今宵かぐろき (海野潔・9.3)
 *「御神火」=火山の噴火を神聖視していう語。「かぐろき」=黒い。

 s-鮫川大橋
 鮫川大橋

 稲原の早生穂(わせほ)にしろく照る月は夜ごとに明し山の峡(かひ)にも (中村憲吉・9)

 s-蓮
 ハス

 以下、『現代短歌の歩み』(武川忠一著・飯塚書店・2007年6月刊)に依る。

 窪田空穂に『捕虜の死』という大長編の長歌がある。万葉集以来の最大長編。次男茂二郎のシベリア抑留中の死を悼んだもの。茂二郎の死は生還した戦友から昭和22年5月に知らされた。空穂は病床にあり、70歳。それでも残された力を振り絞って、五連・二百二十九句の最大長歌を詠んだ。

 捕虜の死   窪田空穂

 兵として北支派遣軍下にありし次男茂二郎、久しく消息を絶ち、生死すら不明にて過ごせるが、五月中旬、茂二郎が戦友の一人なりといふ米村英男君、はからずも我が家を訪はれ、茂二郎の消息を傳へらる。同君も茂二郎と同じく身體弱きため、入隊以来三年間、あやしくも行動を共にし、その一切を知悉せるにより、仔細に告げられしなり。茂二郎は終戦直前、北支より内地防衛軍に向けられし汽車中、ソ聯開戦によりて満州に移され、終戦と共に捕虜としてシベリアなるイルクーツクチェレンホーボに捕虜の身となれるが、二十一年二月十日、発疹チフスに罹り、死去せりといふ。今より一年三箇月前のことなり。我は床上の身として親しく聴くを得ず、章一郎の傳ふるところを聴きて胸臆に反芻するのみ。

 
 シベリアの涯なき曠野、イルクーツクチェレンホーボの バイカル湖越えたるあなた、炭山を近く望みて あはれなる宿舎むらがる。名にこそは宿舎ともいへ、土浅く廣く掘りては かりそめの仮屋根葺き 出入り口一つ設けし 床すらもあらぬ土室、戦前は囚人住みて 勞役に服せるあとか。かかる室ならび群がり 鐵條網めぐらす内に、在満の我が兵五千 捕虜として入れられにける。

 s-夕焼け20180809

 厳冬のチェレンホーボは 氷點下五六十度か、言絶ゆる畏き寒威 人間の感覚を斷ち、おのが息眞白き見ては 命なほありと思ふに、勞役の搾取のほかは 思ふなき國にかあらし 働かぬ冬は食ふなと 生きの命つなぐに足らぬ 高粱のいささか與へ 粥として食はしむるのみ。夜となれば床なきままに、土に置く狭き板の上 押竝び二人いねては、一枚の毛布をかぶりて 軆温をかよはし眠る。目的を失へるどち 言ふことの何のあらむや、つぶやくは常つづく饑 眼に迫る戀しき祖國、口にすれば暫しまぎるる かひあらぬ訴のみなる。

 s-夕焼け②20180809

 わりなきはただ一着の 身につくる軍服かな、薄くして寒氣のとおり、著きらしてぼろぼろなるに、著がへなきそのシャツをしも、おのれ等が巣どころとなし 饑うる身を食となしつつ ふえにふゆる虱の族よ、その數は幾そくばくぞ。臍のあたり手もて探せばいく匹をとらへは得れど、脱げば身のこほる寒氣に 捕り減らすことすらならぬ。全員の五千に巣くふ この虱チフス菌もち、吸ひし血に代へて殘せば、あはれ見よ忽ちにして大方は病者となりつ、高熱にあへぎにあへぐ。醫師をらず薬餌のあらず、あるものは高粱のみの、この患者いかにかすべき。悲しきは生を欲する 人間の本性なるよ、食はざれば死せむと思ひ 強ひてすする堅きその粥、衰へし腸ををかして 一たびの下痢を起せば、その下痢やとまる時なく 見る見るに面形かはり、物言ひをしつつ息絶ゆ。ここの水ははなはだ惡るし 高熱の渇きこらへて 飲むな夢と相警むれ、飲まざるも命堪へえで 一日に何十人は 息せざる者となりゆく。チェレンホーボ長き一冬、千人や屍軆となりし。

 s-夕焼け③20180809

 戦友のこの悲しきを いかさまに葬りなむか、全土ただ大氷塊の 堀りぬべき土のあるなし。ダイナマイト轟かしめて 氷塊に大き穴うがち、動きうる人ら掻き抱き その中にをさめ隠しつ。初夏の日に氷うすらぎ あらはるる屍軆を見れば、死ぬる日の面形保ち さながらに氷れるあはれさ。その屍軆トラックに積み 囚人の共同墓地ある 程近き岡に運びて、一穴に五人を葬り、捕虜番號書ける墓標を 人の身の形見とはなし、千人の戦友の墓 さびしくも築き竝べけり。

 s-夕焼け④20180809

 死を期して祖國を出でし 國防の兵なる彼等、その死のいかにありとも 今更に嘆くとはせじ。さあれ思ふ捕虜なる兵は いにしへの奴隷にはあらず、人外の者と見なして 勞力の搾取をする 奴隷をば今に見むとは。彼等皆死せるにあらず 殺されて死にゆけるなり、家畜にも劣るさまもて 殺されて死にゆけるなり。嘆かずてあり得むやは。この中に吾子まじれり、むごきかな あはれむごきかな かはゆき吾子。


 八月は千万の死のたましずめ夾竹桃重し満開の花 (山田あき・『現代短歌集成3』から。角川学芸出版刊)

 皆さま、ご自愛専一に願います。 

虬竜の怪(きゅうりゅうのかい)


 「虬竜」は中国の伝説中の瑞獣で、神馬であり、馬が八尺以上になると竜になる。その竜の中で二本の角のある竜が虬となる。(今年のタイトルは漱石・『草枕』の難解熟語)

 今回の短歌は『昭和万葉集秀歌 【三】 四季・自然』(講談社現代新書・上田三四二 編、昭和60年1月刊)から。作者名の後の数字は昭和何年の、或いは昭和何年何月の発表かを示す。

 葦の葉にゆれつつすがる行々子(ぎょうぎょうし)声啼くときに口あかく見ゆ (松村英一・9.6)
 *「行々子」=オオヨシキリ。葦原草原に住み、「ギョッギョッ」と囀る。

 s-朝霧の須賀海岸2180727
7/27、朝霧の錦須賀海岸。

 降る雨に五位鷺渡るすがしさよ苗田の中に白き影ひく (田中藤太郎・11.9)

 s-ユリ20180727

 深山木(みやまぎ)のはるかに高きこぬれより、朝雲わきて夏は来にけり (安東聖空)
 *「こぬれ」=木末。こずえ。

 s-メマツヨイグサ20180727
 メマツヨイグサ。

 ふるさとの盆も今夜はすみぬらむあはれ様々に人は過ぎにし (土屋文明・10)


 s-平衡感覚20180727
 平衡感覚!

 夏の草花
 吹き過ぐる風は乾けりかがやかに揺れては紅き芍薬の花 (川田順・6)

 s-ミズナス20180730
 以下、7/30の畑で。水ナス。

 瀝々(れきれき)と吹き上ぐる風に火の山は朱のつつじの波荒立てり (鶴見和子・14)
 *「瀝々と」=みずのしたたる音や風の時折ふくさま。

 s-ピーマン20180730
 ピーマン。

 おもはざる森のたかきに咲き垂れて花房長き藤を見にけり (石井直三郎・13.3)

 s-ピーナッツ20180730
 ピーナツも元気に成長中。

 泰山木の花はゆふべにおとろへて広葉(ひろば)がくりにすでにかそけし (森川汀川・9.8) 

 s-トウモロコシ20180730
 今年のトロモロコシはカラスの攻撃を受けてない。なぜ? 
 
滝しぶきかかれるそこら一めんの藺草(いぐさ)の色の青きすがしさ (金子薫園・3.7)
 *「藺草」=イグサ科の多年草。湿地に生える。茎を畳表などに用いる。

 s-キュウリ20180730
 キュウリは朝夕2回収穫。

 山ふかく細き流れのせくところゆすられている虎杖(いたどり)の花 (今井邦子・6)
 *「せくところ」=せばまっているところ。「虎杖」=タデ科の多年草。若芽はウドに似る。紅色の斑点がある。夏、淡紅色、または白色の花を穂状に開く。若芽を食用とし、根は薬用とする。

 s-カボチャ(ほっこり姫)20180730
 カボチャ「ほっこり姫」の花。
 
うす紅き枝はかくれて しみじみと ははきの花も咲きそめりけり (東城士郎・44)
 *「ははき」=帚木(ほうきぎ)。アカザ科の一年草。夏、淡緑色の細花をつける。

 s-西瓜20180730
 西瓜も甘くておいしくできた。
 

 わが心かすか明るむ思ひして宵の衢(ちまた)に蛍を買ひぬ (岡井弘・7.8)

 s-スベリヒユ②20180730
 サツマイモの畝間を覆い尽す「スベリヒユ」。とにかく成長が早い。引き抜いて放置して10日ほどたっても枯れない。それどころか茎から根を出して甦ってしまう。

 薄紙の中に蛍を光らせてたからのごとく子は持ちまわる (小田清一・11)

 s-スベリヒユ③20180730
 一株でこんなにも育つ。厄介な雑草なのだが、ω-3脂肪酸を多量に含む健康食品であり、山形県では「ひょう」と呼び、茹でて芥子醤油で食べるという。沖縄県では「念仏鉦」(二ンブトゥーカー)と呼ばれ、葉物野菜の不足する夏場に重宝されるとも。トルコやギリシャでも食される由。ならば、サツマイモではなくスベリヒユを栽培すればひと夏に何回も収穫できるのだが・・・?

 ゆふ闇の空をとほりていづべなる水にかもゆく一つ蛍は (斎藤茂吉・15)

 s-スベリヒユ①20180730
 黄色のかわいらしい花も咲かせる。
 

 あかつきの蝉のひとこゑが諸声(もろごゑ)を誘ふあはれをききとめにけり (吉野秀雄・22)
 *「諸声」=和して発する多くの声。

 s-百日紅20180730
 サルスベリ。

 夕立の雨うちふれり庭のへにひとつの蝉の啼きとほるこゑ (土田耕平・8)

 s-カスミソウ20180730
 花期は過ぎて枯れ始めたカスミソウに夜来の雨が付き、満開の花のようになった。

 川鴉なきすぎゆきぬたぎつ瀬のたぎち輝き流るるうへを (若山牧水・13)

 s-オニユリ20180730
 多分、オニユリ。

 「平日に家にいる」という不思議な感覚にも慣れてきた。還太郎の住むアパートには16台分の駐車場があり夜は満車になるが、日中は2,3台しかない。皆さん「お勤め」にお出掛け。近くの総合病院の駐車場は朝から満車状態だけど、日中のコンビニはガラガラ、役所に行ってもほとんど待たされない・・・。満員電車ではなく、いつでも座れる電車状態。とにかく街全体が静か。
 
 明日から8月ですね。皆さま、お元気にお過ごし願います。
 

溌墨淋漓(はつぼくりんり)

溌墨淋漓(はつぼくりんり)は筆に墨をたくさん含ませて、勢いよく雲や煙などの風情のある様子を描くこと。「溌墨」は水墨山水画の技法の一つで、墨の濃淡の変化を使い、明暗を表現したり、墨をはね散らしたりして表現する画風。「淋漓」は勢いがあふれ出ている様子。(今年のタイトルは漱石『草枕』の難解熟語)


 今回も短歌は『昭和万葉集秀歌 【二】 相聞と挽歌』(講談社現代新書、岡井隆 編、昭和59年12月刊)の「病床の日に」から。作者名の後の数字は昭和○年○月の発表かを示す。年のみの表示もあり。

 しばらくを抱き起されて見る小庭わが播しものなべて芽吹ける(鶴逸喜・31.9)
 
 s-出荷20180705
 7/5の出荷品。左から白タマネギ、ジャガイモ、カボチャ(ほっこり姫)、紫タマネギ。楽しむことが優先なので、基本的には少量多品種栽培。ただ、サツマイモとカボチャは雑草対策も兼ねてやや多い。

 李白の詩読み終へし時住み古りしこの病室を狭くおぼゆる(峰梨花・30.3) 
 
 s-はやと20180709
 「はやと」という品種。見てくれはゴツゴツとしているが、包丁がすんなり入る柔らかさ。中辛のカレーに入れて食べたら、ジャガイモよりも煮崩れせず、もっちりしていてなかなか美味。ただ、いわきではなじみがないようで、売れゆきは芳しくない。 妻からは「気の利いたPOPを作るように」との御下命あり。

 何待つとなき半身を起こしをりほたるの光と息づきあひて(相良宏・31)

 s-くもの巣にあめ20180706
 蜘蛛の巣に雨。 

 泣きながら生(あ)れ来しときも一人ゆゑ死にゆく時もひとりと思ふ(滝沢亘・28.10) 

 s-紫の花20180706
 ヒメランタナ。

 血を吐きてゐれば父母らが暗闇にこもごも顕(た)ちて我を励ます(黒須牧郎・29.12)
 
 s-まだら模様の花②201807
 ヒャクニチソウかな? 不気味 !

 母にすがり向きかへ臥せば鮮(あたら)しき麦生のみどりよ吾は生きたし(千葉千代子・50)

 s-まだら模様の花201807
 こちらも不気味 ‼

 ふるさとの野川の氷ひび割るる音ときこえて肋(あばら)切られをり(伊藤祐輔・28.9)

 s-キク201807
 タイカンマツバギク。

 ハンセン氏病
 (らい)を病む我を見給ふ父の眼は死ねよと如し生みの子我に(瀬戸愛子・28)

 s-蓮20180706
 スイレン。

 6/29にいわきへ引っ越した。2,3日は片付けやら種々の手続き。そして7/7には、いわきから車で1時間強の母畑温泉「八幡屋」に1泊。兄弟とその伴侶たちが集まって母の卒寿の祝い。食事も温泉も言うことなし。翌朝の朝食バイキングも素晴らしかった。
 9日からは妻の指導のもとで本格的に畑仕事に参加。「晴耕雨読」を気取ってみたが、晴天続きで「晴耕」ばかり。「雨読」の日がない。土日だって晴れていれば畑に「出勤」。 まあ、そうはいっても11、12日は都内で飲み会。15日もいわきで飲み会。
 
 皆さま、くれぐれも熱中症にはご用心願います。(写真編集ソフトの調子が悪く、今回は短編になりました。)

面前に娉婷(ひょうてい)と現れたる姿に

娉婷(ひょうてい)は女性の穏やかな美しさがあること・そのさま。(今年のタイトルは漱石『草枕』の難解熟語。)

 今回も短歌は『昭和万葉集秀歌 【二】相聞と挽歌』(講談社現代新書・岡井隆 編・昭和59年12月刊)から。(作者名の後の数字は昭和何年何月の発表かを示す。何月か不明の場合は何年かのみ。)

 木隠(こがく)りの芝に陽の斑(ふ)を静かに踏み君去りゆけば佇(た)ちて見送る(中西進 28.6)

s-発電所20180701
  6月29日、還太郎は土浦市から福島県いわき市へ転居。翌30日には引っ越し荷物もほぼ片付き、7月1日、早朝散歩へ。上掲の写真は鮫川河口付近。5時17分。対岸の石炭火力発電所が朝霧に囲まれている。

 たなぞこを重ね寂しさをわかち合ふ風鳴る高き窓に向ひて(山口智子 28.2) 
 *たなぞこ=たなごころ、てのひら。

 s-釣り人20180701
 5時35分、朝霧は更に深くなるが、20~30m間隔で太平洋に向かい立つ釣り人は怯む様子なし。
 
 もろこしの穂に月ありしかの夜よふるへて我を抱き給ひき(福田節子 27.6)

 s-アザミ20180701
 ノアザミ。
 上掲の写真以下は、海岸沿いの防風林の中を通る小道で。「防風林」ということで、一定の手入れがなされている様子。日射しも避けられるので、絶好の徘徊コースかも。
 
 灰黄(くわいくわう)の枝をひろぐる林みゆほろびなむとする愛恋ひとつ(岡井隆 28.6)

 s-白い花20180701
 スイカズラ。

 快活にほほえみいしが美しき頬をつたいて落ちしひかりよ (篠弘 32)

 s-赤い花②20180701
 バラ。

 かなしみの遂に祈りのごとくなるこの夜半ひそかに君の名を呼ぶ(荒金千代 31.6)

 s-黄色の花20180701
 メマツヨイグサ。

 君住める故に愛せしこの街の雪積む駅の停車短く(葉山宣淳 33)

 s-赤い花20180701
 ヒメオウギズイセン。

 雪しろの はるかに来たる川上を 見つつおもへり。斎藤茂吉(釈迢空 30)

 s-黄色の花②20180701
 オオキンケイギク。

 みいのちは今日過ぎたまひ現身(うつしみ)の口いづるこゑを聞くこともなし(佐藤佐太郎 31)

 s-ネギ畑20180701
 鮫川の堤防の内外の農地はネギ畑が多い。収穫時期をずらすべく何回かに分けて植えている。なかなか一直線というわけにはいかない。

 今日の歩数10,706歩。体重もあと600gで70kg台。明日はサツマイモ植え付け用の畝を100mほど作るので、明日にでも「夢の70kg台達成」かな ❢
 皆さま、もう梅雨明けとか。暑くなります。ご自愛専一に願います。



齷齪(あくそく)

 齷齪(あくそく)。心にゆとりがなく、目先のことに追われてこせこせと気ぜわしく事をするさま。青空文庫では「あくそく」とルビがふってあるが「あくせく」とも。(今年のタイトルは漱石・『草枕』の難解熟語)

 今回の短歌は『昭和万葉集秀歌』の【二 相聞と挽歌】から。作者名の後の数字は作品の発表時期(22.12は昭和22年12月)。

 戦ひに命死ぬべしと別れたりき吹雪(ふぶ)きて青き夜の窓なりき(河村盛明 22.12)

 s-朝露20180624
 スギナ。

 今回の写真は6/24いわきにて。

 戦につづく幾とせのきびしきをけふのいのちありて君に会ひにけり(赤谷昭枝 25.1)

 s-朝の景色20180624

 絹マフラー色はなやかに笑み来るを枇杷の花匂ふ樹の陰にまつ(小山智士 23.2)

 s-茗荷と蕗20180624

 うるはしき水無月の野路いそぐとき待たるる人とわれを思ひぬ(佐藤春夫)

 s-朝の景色④20180624

 思ひ浮かぶかの日の別れ青芝に汝(な)れが影あはく長くうつりゐき(山本成雄 23.8)

 s-朝の景色③20180624

 逢ふ日あり逢はぬ日ありて青麦のさやさやとこころ君にかよへる(金井明 26.7)

 s-朝の景色②20180624
 ムラサキツユクサ。

 逢わむ日を心に待てば美しくなりたしと念(おも)うかなしきまでに(前田安津子 23.10)
  
 s-紫陽花20180624
 アメリカノリノキ「アナベル」
 
 訪ね行き君に見せむと結いにける我がくろかみに春の雪ちる(栗谷節子 22.5)

 s-桔梗20180624
 キキョウ。

 乾草のかぐはし中に身を投げて目閉(とぢ)る時にふれて来よ君(森下真理 23.8)

 s-薔薇20180624
 バラ。

 むらさきの日傘の色の匂ふゆゑ遠くより来る君のしるしも(川田順 27)
 *「匂ふゆゑ」は美しく映えるので。*「しるしも」は著しも。きわだっている・はっきりしている。

 s-花②20180624
 ペンスモンテン。

 わがこころの環(たまき)の如くめぐりては君をおもひし初めに帰る(川田順 27) 
 *「環の如く」はめぐりめぐってきわまるところのないことのたとえ。

 s-花20180624
 ヒメランタナ。

 春のめだか雛の足あと山椒の実それらのものの一つかわが子(中条ふみ 29) 

 s-ダリア20180624
 ダリア。

 剪毛(せんもう)されし羊らわれの淋しさの深みに一匹づつ降りてくる(中条ふみ子 27)

 s-ダリア②20180624

 思ふ人あらば君疾(と)く癒えなんと言ひし医師(くすし)をひそかに愛す(小島和子 30.12)

 s-ダリア③2010624

 明日の逢ひを約して丘を下る視野に海に続かむ川展(ひら)けたり(山本詞 31.5)

 s-シソ20180624
 シソ。

 やはらかく雑草の丈に閉ざされて座れば君に月さしにけり(馬場あき子 30.9)

 s-いただきもの20180624

 還太郎は6月末にいわき市へ転居する。上掲の写真は送別会で頂いたもの。花束のほかにもいろいろなお餞別品をいただいたが、最も多かったのはお酒。土浦に住んだこの1年間、毎日会社に行くのが楽しみだった。職場の仲間に感謝。
 ということで、7月からは、いわきにいる92歳の義母と90歳の実母に親孝行の真似事をしつつ、妻の指導を受けて野菜作りに励むことに。これからもブログは続けるので、絶滅危惧種的に少ない弊ブログの読者の皆さま、引き続きよろしく。

 皆さまのご健康を祈っております ! 実は今日も送別会なのであります・・・。

弊竇(へいとう)

弊竇(へいとう)、の「竇」は穴の意。弊害となる点。欠陥。「今代芸術の一大弊竇は・・・」。(今年のタイトルは漱石・『草枕』の難解熟語。)

 今日は薄曇りで午後時々晴れ。一昨日と昨日、そして今日も午前中は長袖のポロシャツを着用。半袖では寒い ! 9時過ぎからご近所のお庭の鑑賞しつつ散歩した。
 
 今回の短歌は講談社現代新書『昭和万葉集秀歌 〔二〕相聞と挽歌』(岡井隆 編・昭和59年12月20日刊)から。

 相逢はぬ日を重ねつつたな雲の夕づく頃はひとり嘆くも(中島勝)

  s-バラ20180617
 バラ。

 告げがたき思ひにふるふわれの手に大き蛍を娘(こ)は呉れにけり(岩田清)

 s-バラ②20180617
 バラ。

 葉をこぼす木の間あかるし先ゆきて言葉少なき人をさびしむ(鶴見英之)

 s-黄色の薔薇20180617
 ダリア。 

 逢へる夜の時じくの雪顔臥せて歩める汝(なれ)が額(ひたい)ぬれつつ(相沢正) *「時じく」は季節はずれの意。
 
 s-ピンクの花2180617
 アルストロメリア。

 後髪(おくれげ)に触(ふ)りつつわれのきよかりき雪ある舗道に小雨ふり出づ(松坂二郎)  
 
 s-ブルーベリー②20180617
 ブルーベリー。

 あわただしく過ぎゐる吾にかぎろひの夕べの逢ひはたまゆらなりし(五味保義) *「たまゆら」はわずかの時間の意。
 
 s-黄色の花20180617
 ヘメロカリス。

 手を垂れてキスを待ち居し表情の幼きを恋ひ別れ来りぬ(近藤芳美)

 s-黄色の花③20180617
 イヌガラシ。

 みつめゐる君が面(おも)わの眩しければサン・テクジュペリのことを話し出(いだ)しぬ(近藤とし子)

 s-合歓の花20180617
 ネム。

 我が若き思ひのすべて街を往く君を包みて夕霧となれ(加太こうじ)

 s-狛犬20180617

 うつつなくわれら相より月かげに遠潮鳴(とおしおな)りの音をききにき(坂東房子)

 s-紫の花20180617

 月読(つきよみ)の蒼き光もまもりませ加那(かな)(ゆ)き給ふ海原の果て(島尾ミホ)  *「月読」は月の神または月の意。「加那」はあなた、君の意。

 s-赤い花③20180617
 ダリア。

 わが想う人も恋ふらめ山の上(へ)の明けなむとする薔薇光(かげ)のそら(島尾ミホ)

 s-青い花④20180617
 ムラサキツユクサ。

 ふり向かず別れては来ぬ別れ来て冬木の道に涙こぼしき(潮霧子)

 s-赤い花②20180617
 アルストロメリア。

 リラの花卓のうへに匂ふさへ五月(さつき)はかなし汝(なれ)に会わずして(木俣修)

 s-青い花②20180617
 グラジオラス。

 汝が吐息頬近うまでおぼゆるを愛しきものと眼(まなこ)とぢをり(村尾公) 

 s-赤い花20180617
 ダリア。

 泥まみれの天使のようなお前、そっと抱けば空に立つ虹(前田透)

 s-青い花20180617
 キキョウ。

 くれなゐの苺の汁を吸ふごとき戯れをもて唇(くち)触り給ふな(杉浦翠子)

 s-新葉20180617
 シロダモ。

 あさあけに白き帆船を夢みたり醒めてこほしきわがこころづま(服部忠志)

 s-紫陽花③20180617
 アジサイ。

 見出(みいだし)たる嬉しさに叫ぶ妹の声か木魂となりて再びは聞こゆ(遠藤正人)

 s-紫陽花20180617
 アジサイ。

 お茶の水崖のつたの葉紅(あけ)にそみ妻となる娘(こ)を思ひつつ見る(木山捷平)

 s-紫の花⑥20180617
 トキワハゼ。

 まがなしき心きはまりたまさかに逢ひ得し君を泣かしめにけり(山口茂吉) *「まがなしき」はいとしいの意。

 s-蝶20180617
 アゲハチョウ。

 蒲の穂にさやに霜降り冷ゆる夜を君と相寝るさちを恃(たの)まむ(山口茂吉) 

 s-白い花20180617
 ダリア。

 人生のはじめてにしてきみと聴く谷川の音ほかはなかりき(岡山たづ子)

 s-白い花②20180617
 インドハマユウ(クリナム)。
 
 添ひて座る吾妹(わぎも)はいまだいとけなし南京玉を指にはめたり(白駒一義) *「南京玉」は小さな穴のあいた陶製やガラス製の玉。
 
 s-白い花③20180617
 ニンジンかな?
 
 
 ふくろふは雪降る夜半も鳴くと云ふ覚めて歎きて君はききけむ(森本康子) 

 s-白い花④20180617
 ハコベ。

 おもひいでてたへがたくをりうつむける君が睫(まつげ)のながかりしかも(久保田安治)
 
 s-捩花20180617
 ネジバナ。

 今日は1万歩ほど歩いたのだが、町内の環境整備の日になっているようで、多くのお宅が生垣の剪定作業をやっておられた。
 皆さま、天候不順というか梅雨です。ご自愛願います。


 

幽闃(ゆうげき)のあなた、遼遠(りょうえん)のかしこへ

「幽闃(ゆうげき)」は寂しく静かなこと。「あなた」は自分や相手から遠いところ。遼遠(りょうえん)ははるかに遠いこと。「かなた」も遠くはなれた方。(今年のタイトルは漱石・『草枕』の難解熟語。)

 前回までテキストにしていた『わが愛する歌人」(第一集~第四集・有斐閣新書)は終了。今回のテキストは『角川現代短歌集成 3 自然詠』。

 じゅっぽんのゆびを広げて指の間に五月の風を入れております (上野春子『虹の食べ方』)

 s-ピンクの花②20180531
 ヒルザキツキミソウ。

 時間ひらたく大皿の縁にもりあがり今しあふれん五月の朝 (糸川雅子『組曲』)

 s-ピンクの花20180531
 ヒルザキツキミソウ。

 わが息子のにきびのやうな力にて五月の山は動きゐるなり (藤岡成子『真如の月』)

 s-朝日が当たる20180531
 コニファー。
 
 鯉のぼりほうとふくらみくたと降るこの緩慢なる力見よとぞ(川野里子『五月の王』)
 s-新芽20180531
 コニファー。

 ふろばより走り出て来し二童子の二つちんぽこ端午の節句 (佐佐木幸綱『金色の獅子』)

 s-朝顔20180531
 コヒルガオかな?

 うす赤き茎匂ひたち菖蒲湯にをのこ子ひとり浄められゆく (小宮山久子『夕稜』)

 s-紫の花20180601
 キキョウソウ。

 鯉幟蛍光塗料あざけらく或る夜垂直の死後硬直(リゴル・モルチス) (山城一成『葉隠様式』)
 
 s-黄色の花②20180531
 カタバミ。 

 五月六日立夏のゆうべ緑なる草蜉蝣(かげろう)は机に来をり (宮柊二『獨石馬』)

 s-紫の花②20180531
 マツバウンラン。

 母の日にプレゼントされし傘翳(かざ)せば雨音は娘のささやきに似る (村田不二江『二人しづか』)

 s-黄色の花20180531
 タンポポ。

 傘雨忌の青葉のあめは眼鏡屋のめがねを濡らすことなく過ぎぬ (小島ゆかり『獅子座流星群』)
 *「傘雨忌」は作家・劇作家・俳人の久保田万太郎の忌日。5月6日。「万太郎忌」とも。

 s-防火用水池
 工場の防火用水池。朝と昼、鯉に餌を与えるのが楽しみ。まず池の縁のコンクリートを叩くと十数匹の鯉が私の方へ寄ってくる。餌を投げ入れるとピラニアが獲物に襲い掛かるような勢いで競い合って食べる。

 寂しさを身の重りとなし衣替へぬ水無月あらあらと山きほひ立つ (佐藤美知子『白珠』)

 s-なにこれ2010531

 六月のもの思(も)うも憂き雨の日は胸のあたりに古墳が眠る (渡辺松男『寒気氾濫』)

 s-はな20180531

 ピンはずしとびたたむとする青き蝶みなづき若葉の光の大地 (木造美智子『遠き舟唄』)

 s-ツツジ20180531
 サツキ(大盃)

 水無月という六月の空晴れてランプは納屋に麦は畑に (岡部桂一郎『一点鐘』) 

 s-ツツジ②20180531
 サツキ(大盃)

 みづがねのひかりの潮にみなぎらひ爆撃機(ステレス)見えざる空の水無月 (島田修三『東洋の秋』)
*「みづがね」は水銀のこと。
 
 s-シロツメクサ20180531
 シロツメグサ。

 (よし)と言ひ葦(あし)と呼ばれて湖岸の水無月直ぐ雨期に入りゆく (安永路子『褐色界』)

 s-キク20180531
 タイカンマツバギク。
 
 今回の写真は全て還太郎が勤務する工場で撮った(5/31、6/1)。植木もたくさんあるが、数万平米の敷地なので除草が行き届かないのが幸いし、あちこちに野草が折々の花を咲かせる。
 天気予報では来週梅雨入りかと。皆さま、ご自愛専一に。

暮れんとする春の色の、嬋媛(せんえん)として

暮れんとする春の色の、嬋媛として。「嬋媛」は美しく心ひかれるさま。(今年のタイトルは漱石・『草枕』の難解熟語。)

 今回の短歌は松倉米吉。テキストは有斐閣新書『わが愛する歌人 第四集』(1978年刊)。解説は田井安曇。
 松倉米吉 : 明治28年12月25日~大正8年11月25日。新潟県出身。明治40年高等小学校中退。鍍金工場に勤務。大正5年肺炎を病み休職。大正6年西洋洗濯業をへて、金属挽物職に奉公し、挽物職人となる。大正2年「アララギ」入社、古泉千樫に師事。その作品は病苦と闘う青春の苦しみと、愛を、確かな写生の目でとらえ表現している。

 吾の身の吾がものならぬはかな日の一年(ひととせ)とはなりぬ日暮待ちし日の

 松倉米吉は行路病者扱いで東京施療院で死んだ。数え年25歳。上掲の歌は美しい歌というような種類に凡そ属さないごつごつの歌だが、リズムは重くたゆたい、哀切である。「ヒトトセトハナリヌ」と9音で行き、更に「ヒグレマチシヒノ」と8音で結ぶ。「はかな日」の中身をもう一度言葉を替えてリフレインのように据えている。米吉は歌っているのである。決して叙述しているのではない。

 s-赤い実20180527 (1)
 ニワトコ果実。

 槌を打つ窓にをりをり椎の葉に陽の照りはゆる朝のうれしも

 米吉は新潟県頚城郡糸魚川町に生まれ。5歳で父を失い、11歳で親戚に預けられ、更には母が上京して再婚・・・と続く。松倉家は事実上ほろび、米吉はさながら孤児と化す。13歳で高等小学校を中退して上京し、母の婚家に寄寓し、メリヤス工場に就職。ただ母の死後、義父は本妻を呼び戻しているから、はたして正式の結婚であったのか、疑問である。

 s-緑の葉②20180527
 ネム。

 日除(ひよけ)にと粉袋かけて見たりけりあはれこの貧しさにあくまでふさはし

 大正4年4月号「アララギ」に、以下の2首とともに掲載された作品。この頃はまだ鍍金工場に勤務。それにしてもこの一連の貧乏への自信はどうだろう。「あはれこの貧しさにあくまでふさはしい」と「日除の粉袋」を言うことばかりではなく、謳われていてることは不安や歎きや困惑でありながら、しかもなお背骨をまっすぐ立てて昂然としてしているではないか。

 s-緑の葉20180527
 
 半月に得たる金のこのとぼしさや語るすべなき母と吾かな

 s-葉④20180527

 極まりて借りたれば金のたふとけれあまりに寂しき涙なるかも

 師の古泉千樫の米吉評。真率にして痛切なる、読むに堪へざらしむるまでである。実生活上如何なることにも失望せず、勇猛なる意志を以て自己を向上し改造することに努力して貰ひたい。内面的に突き進んだ歌もそこから自然に生まるると思ふ。

 s-葉③20180527
 ノゲシ。
  
 大川の宵の満ち汐闇ふかく波ふくよかにほの光りくも 

 大川は墨田川つまり荒川の下流をいう。この暴れ河も海へ出るところでは静かな川となり、その水面一杯に闇の向こうから潮が押してくる、それはよく見ればほのかに光となってふくらんで来る、というのである。このとき、米吉は22歳、5月に肺炎を病み数度の喀血を見ている。
 
 s-葉②20180527

 灯ともす街飯(いひ)煮ゆる匂ひうまければ涙ながれて母に帰るも

 大正6年の作品。もう米吉の晩年といっていいだろう。あと3年の猶予しかない。当時失業状態で病を養っていた。上掲の歌には「貧しさに家出を思ひて」と註がある。

 s-葉20180527

 今は言(こと)かよはぬか母よこの月の給料(かね)は得て来て吾は持てるを

 大正6年12月、母は死ぬ。死と給料を結び付けた歌はあったか知れぬが、それをかく哀切に誰が唄い得たろうか。

 s-白い花20180527
 ウツギ。
 
 下駄をはきつつ居れりとは知れど人目しげし顔さへ見ずに離るる切なさ

 米吉の最晩年、大正8年の作品。金属挽物業林氏方に転じ、人柄を見込まれてか養子分として働く。米吉は二人の娘のうち姉の登美子と恋仲になる。この暗闇の中の濃い朱の登場を彼のためにひそかに喜びたい感情にとらわれる。
 上掲の歌は、親方の家も貧しく、恋仲の娘はいま料亭への女中奉公に発とうとしている。それはわかっているのだが、人目を気にして見送ることもできず、仕事をしながらじっと気配を感じている職人の恋である。
 
 s-逆さの蜂20180527
 ウツギ。

 すずかけの広葉ひろはの雨に濡るる見て居る眼(まなこ)になみだながるる

 喀血はしばしばあり、一人胸にたたんで働くが前途は自ら知っていたのである。9月11日、アララギ会員山本氏の診察を受け「肺病」が確定。 
 s-赤い葉20180527
 
 かなしもよともに死なめと言ひてよる妹にかそかに白粉にほふ
 
 登美子が隠れて逢いに来た。「ともに死のうと言って寄り添う」登美子は料亭奉公であり、白粉がにおう。それが哀しいのである。

 s-青葉20180527
 
 帰しなば又逢ふことのやすくあらじ紅き夜空を見つつ時ふる
 
 s-紫の花④20180527 
 シモツケ。

 待ちつかれ眠りたりしがうらさびし今まで来ねばなどか今日来む
 
 s-紫の花②20180527
 コマツナギ。
 ふたたびは暑さかへらぬ風らしもうすき布団に身をおしつつむ 

 s-紫の花20180527
 ノアザミ。

 この日ごろ窓ひらかねば光欲しほそくながるる夕日のよわさ

 s-陰翳③2018527
 アカメガシワ。
 ひそひそと外の面(とのも)には雨降るけはひ妻は乳ふさよもぬらすまじ

 孤独のうえに病が重なり、窓を開けてくれる手さえない。勤めの間を逃げるようにして当方へ歩んでくる登美子を幻想し、妻よ乳房を雨で濡らすなと呼ぶ。エロティシズムはここで慈悲とでも呼ぶよりないものに昇華し、絶望のうちに横たわっている米吉をほのぼのと浮かびあがらせる。 
 s-陰翳②20180527

 浪吉は吾の体を警察にすがらんと行きぬなぜに自ら命を絶ちえぬ

  「浪吉」は高田浪吉(明治31年~昭和37年)のこと。アララギ派同人であり、米吉らと共に「行路の研究」を発刊した。冒頭に米吉は「行路病者として東京施療院」で死亡と記載したが、「行路病者」とは「飢えや病気で旅の途中で倒れ、引き取り手のいない者。行倒れ」である。浪吉は米吉の生活の一切の面倒をみた。

 s-陰翳20180527

 昭和初年、中野重治は『芸術に関する走り書的覚え書』で、「斎藤茂吉と松倉米吉とは短歌史の最後のペーヂであろう」と言う。

 本日の写真は「三ッ石森林公園」と「雪入ふれあいの里公園」で。アパートから約10kmかな。昨日も今日もいい天気で有難かった。ところで、昨日、北方謙三の『チンギス紀』の「一」と「二」を購入。「一」は読了。「二」はこれから。やっぱり北方謙三は途中でやめられない。 皆さまのご健勝を願ってます。

  

蕭寥(しょうりょう)

 「蕭寥(しょうりょう)」はひっそりとしてものさびしいさま。(今年のタイトルは漱石・『草枕』の難解熟語。)

 昨日(5/19)は都内で高校の同級生10名+2名と飲み会、今日はいわき日帰りドライブ。なので、またまた短歌はお休み。
 下の写真は妻実家の大きすぎる家庭菜園?。義姉と妻と義母が主担当。義兄と還太郎は力仕事要員。手前は総延長約400mのサツマイモ用丸畝。
 s-庭の畑20180520

 いま何種類の野菜・果樹があるのか、数えてみた。 1.ソラマメ 2.カリフラワー
 s-ブロッコリー20180520
 これは上出来のブロッコリー。

 3.ブロッコリー 4.夏ネギ 5.冬ネギ
 s-ブロッコリーの茎20180520
 このブロッコリーは茎もしっかり育って太い。

 6.ニンジン 7.トウモロコシ
 s-バラ20180520

 8.枝豆 9.赤タマネギ
 s-バラ②20180520

 10.白タマネギ 11.カブ
 s-白い花20180520
 アメリカテマリシモツケ「ディアボロ」。

 12.ジャガイモ 13.サツマイモ(3種類)
 s-ピンクの花20180520
 タイカンマツバギク。

 14.ニンニク 15.ナス
 s-ヤマブキ20180520
 ヤエザキヤマブキ。

 16.ピーマン 17.タカノツメ
  s-ピンクの花②20180520
 クレマチス。

 18.ミョーガ 19.フキ (この2つは勝手に生えている) 
 s-黄色の花20180520
 オッタチカタバミ。

 20.カボチャ(2種類) 21.レタス(2種類)
 s-紫の花20180520
 ムラサキツユクサ。

 22.ニラ 23.ラッキョ 
 s-新葉⑤20180520

 24.ラッカセイ 25.ミニトマト
 s-新葉④20180520

 26.サトイモ 27.アスパラガス
 s-新葉③20180520

 28.ダイコン 29.赤シソ 30.青シソ
 s-新葉②20180520

 31.イチジク 32.カキ 33.ザクロ 34.梅 35.ユズ
 s-新葉20180520

 いまは収穫期ではなく苗であるもの、果樹の類も数えてみたが、改めてその数の多さに驚く。専業の農家であれば効率を重視しなければいけないのでこんな数にはならないだろうが、大きすぎる『家庭菜園』ならではかな。

 皆さま、気温が乱高下しています。ご用心ください。

窈然として同所に把住する(ようぜんとしてはじゅうする)

 「窈然として同所に把住する」。「窈然」は奥深くて、はるかなさま。「把住」は捉えとどめおくこと。また、禅宗で、師が弟子を指導するとき、向上させるために、弟子の持つ誤った考えを打破・否定して、困惑・絶望に追い込むこと。(今年のタイトルは漱石・『草枕』の難解熟語。)

 今回は短歌はお休み。下の写真は行方市(なめがたし・茨城県)のさつまいも畑。この畑だけで20千㎡あるそうな。
 
 s-2町歩のさつまいも畑20180430

 こちらは妻実家の大きすぎる家庭菜園。中央奥はさつまいも畑。白く光っているが、行方同様に黒マルチが敷かれている。今回の連休の成果。手作業なので、疲れた、疲れた・・・。昨日は畑作業で1万5千歩も歩いたので、21時頃寝てしまい、3時15分起床。健康的なのか、不健康なのか?

 s-ちょっと大きい家庭菜園20180506

 以下はこの連休のいわきの農家の庭先の光景。
 s-あやめかな20180506
 ジャーマンアイリス。

 s-あやめかな②20180506
 ジャーマンアイリス。

 s-コデマリ②20180505
 コデマリ。

 s-ウメ20180506
 ウメ。

 s-白い花20180506
 フランスギク。

 s-新葉20180506
 コウヤマキ。

 s-紫の小さな花20180506
 マツバウンラン。

 s-紫の花③20180506
 シロバナシラン。

 s-紫の花②20160506
 サルビア・ネモローサかな?

 s-紫の花20180506
 シラン。

 s-花顎20180506
 ヤマブキ。

 s-黄色の花20180506
 ガザニアかな?

 s-バラ20180506
 バラ。

s-青い花20180506
 ジャーマンアイリス。

 さて、明日から会社。9連休もすると、会社勤めも新鮮に感じるのでは。皆さま、お健やかにお過ごし願います。

惝怳(しょうきょう)

 惝怳(しょうきょう)は驚きのあまり、ぼんやりすること。心を奪われること。がっかりすること。失望すること。(今年のタイトルは漱石・草枕の難解熟語から)

 今回の短歌は植松寿樹(うえまつひさき)。テキストは『わが愛する歌人 第四集』(有斐閣新書・1978年刊)。解説は富小路禎子。(富小路は植松に師事した。)
 植松寿樹は明治23年2月16日~昭和39年3月26日。東京出身。慶応大学卒業後、銀行、商事会社勤務をへて、大正12年東京芝中学校の国語教師となる。中学生のとき、電報新聞の短歌欄投稿を機縁に空穂に師事。明治38年「十月会」の結成に、大正3年「国民文学」の創刊に参加。昭和21年「国民文学」を離れ、「沃野」創刊。

 しんしんと立ち澄む独楽に六月の青葉の風は光りたりけり 
 玲瓏と澄(すみ)のよろしも竹の独楽ほがらに音を鳴りいでにけり

 いずれも植松の25歳の作品。大正10年発表。確かな把握、対象にふさわしい清新な気分の展開が見事である。この2首は、植松の第一歌集『庭燎』に収められているが、大正10年は茂吉『あらたま』、牧水『くろ土』、空穂『青飛沫』、白秋『雀の卵』等が続々と出版された年であった。
 
 s-ツツジ20180430
 (4/30、お隣のHさん宅のお庭にて) ツツジ。

 どつこいせどつこいせとて手打ちはやししめやかなれや福知山踊 

 26歳のときの作品。時代を超えて深く「あはれ」がしみ入ってくるように思われる。それは26歳の青年の感傷ではなく、人間の生のかなしみが直(ぢか)にひびいてくる感触である。読者の眼にも見える山深い里の暗い灯かげにほのかに動く人影は、何かこの世の外の生の幻のように感じられ、しかも美しく気品がある。
 
 s-ツツジ②20180430
 (4/30、Hさん宅のお庭にて) ツツジ。

 柩をばのせて曳くなりあなあはれ馬は動かすその雙の耳

 この挽歌は齢若い学友の死に際して。この歌には時代が出ているとともにかぎりない情趣をたたえている。

 s-ピンクの花20180430
 (同じくHさん宅のお庭にて) シャクヤク。
 
 掃きよせて落葉焚く間も銀杏の樹やまずしこぼす黄なるその葉を

 この頃植松は慶応の学生であったが、屡々授業をさぼっては九品仏(くほんぶつ・世田谷区奥沢の浄真寺)に遊んだ。いかにも解放感を楽しんでいる歌詞で、早くも自在な作歌力を身につけていたのである。植松が昭和39年に歿すると、この九品仏の墓地に葬られた。46年の7回忌を期して本堂脇に歌碑が建てられ、この歌が彫(きざ)まれた。

 s-紫の花20180430
 (同じくHさん宅のお庭にて) シラン。

 めずらしみ摘みつつ来しを竜胆(りんどう)のはな頂(いただき)に来れば其処にもここにも

 雅で格調高い作品の間に、何気なくさらっと言う軽みを植松は早くから好んでいたようである。さらっと言いながら、底には用意があり、崩さぬ一線があった。

 s-白い花20180430
 (同じくHさん宅のお庭にて) シロバナシラン。

 別れゆきて人すぐに見えずややしばし篠竹分くる音は残れり 
 登り終へし合図待ちては落石を避くる岩陰ゆ一人一人出ず

 植松はよく山へ行った。歌友とゆくこともあったが、生徒をひきつれてゆくことも多かった。

 s-道端の花20180430
 (4/30、路傍の畑の隅に) オオルツボ(シラー・ペルビアナ)

 巻紙のうすでに書ける妹がふみ稚なげにしてこころ籠れり

 結婚前の妻を詠んだ初々しい作品。昭和2年刊の『光化門』から。植松は何事にも動揺や、露わな感情をみせることがなく、常に高雅な雰囲気をもっていた。時折その家を訪う私達の目には、家族もそれぞれの分を守って常に清々しい起居を感じたものである。

 s-白と黄の花20180430
 (同上) フランスギク。
 
 熱き燗をたのしむままに鍋煮えて部屋暖かし妻も子も居よ

 植松を語ればぜひ酒にもふれたくなる。若い頃や特別な宴席などは知るよしもないが、私の知るのは実に程よいおだやかな酒で、心から楽しんで盃を手にし、同席の者もまた楽しかった。

 s-石楠花②20180430
 (4/30、ご近所のOさん宅のお庭で。) シャクナゲ。

 年経れば聳えてついに孤りなり千尋峠の一本杉あはれ

 昭和31年、66歳の作品。この一首はよく短冊などにも書いた。周囲に人生の種々相をみて来て、ようやく盛りを過ぎようとする時、多くの親しい人々の中に生活しながらも、精神は常に孤高であった植松の、矜持と寂寥が深くこめられているようである。
 
s-石楠花20180430
 (同じくOさん宅のお庭で、以下3葉も。) シャクナゲ。

 糸桜咲きかかりたる蕾充ち青岸渡寺はいま粉雪の中 

 青岸渡寺(せいがんとじ)は和歌山県那智勝浦町にある天台宗の寺院。植松の歿後「沃野」の大会が伊勢にあり、帰途多くの者が青岸渡寺を訪れて境内に糸桜を探したが終に見つからない。後で聞くと糸桜は上の神社の玉垣の中にあったという。糸桜のふくよかな蕾と粉雪のこよなく美しいとり合わせの中に青岸渡寺の語感が効果的にすわった一首で、見事な創作技巧と知ったのである。

 s-枯れかけの紫の花20180430
 ジャーマンアイリス。

 日の下に照りかがやける牡丹見て眼を移す方の暫く暗き

 植物の好きだった植松の歌には木草の種類も多く、愛情の籠ったものばかりである。自宅の庭には様々な木草がところ狭しと植えられていた。
 
 s-群落20180430
 ミヤコワスレかな?

 家挙げて伊豆の湯を浴び宿題に孫を励まし年の夜送る

 没年となる昭和39年の正月は、一家をあげて温泉にゆき大いに楽しんだ。2月に心臓のむくみが見つかり入院したが、3月半ばには退院。その月の編集日には一同赤飯のふるまいを受けて全快を祝った。翌日、植松は勤務する芝学園先生仲間数人と、伊津土肥温泉に旅立つことは弟子たちの誰も知らなかった。そして、3月26日深夜、その旅先の宿で心臓麻痺の為急逝した。大好きな旅のさ中、家族も弟子も、誰一人知らぬまに清々と死んでいった。
 
 s-黄色の花20180430
 ジャーマンアイリス。

 還太郎は28日から9連休中。今日(5/4)明日はいわきへ帰省する。皆さま、お元気にお過ごし願います。



無絃の琴を霊台に聴く(むげんのきんをれいだいにきく)

 「無絃の琴を霊台に聴く」。絃の無い琴の音色を霊台(周の文王が建てた物見台、転じて天文台)。詩人の陶淵明は琴に弦を張らず、ただ眺めていたという。また菜根譚には「無絃の琴を聴き、無字の書を読む」という。要するに無窮の世界を言っている由。興味のある方は「弦の無い琴をひく」を検索願う。(今年のタイトルは漱石・草枕の難解熟語)

 さて、今回の短歌は川田順。テキストは『わが愛する歌人 第四集』(有斐閣新書・1978年刊)。解説は橋本喜典。
 川田順(明治15年1月15日~昭和41年1月22日)は東京都出身。城北中学、一高をへて、東大法学部卒業。住友本社に入社し常務理事となったが、昭和11(54歳)年実業界を引退。明治30年「竹柏会」に入門、佐佐木信綱に師事。大正13年、「日光」の創刊に参加。昭和17年歌集『鷲』によって第一回帝国芸術院賞受賞。昭和23年宮中歌会始の選者、昭和37年芸術院会員となる。

 わがこころ環(たまき)の如くめぐりては君をおもひし初めに帰る

 この歌は歌集『東帰』(昭和27年刊)の一首。この歌の「君」は京都大学教授中川与之助夫人俊子であり、俊子は当時39歳、順は67歳。二人の関係が発覚し、三者はそれぞれ懊悩の五百日を経て、漸く解決の話がでていた矢先、順は自責の念からか、遺書を知己に郵送して、亡き妻和子の墓前にて自殺を図った。結局、順と俊子は昭和24年3月に結婚し、国府津に住む。(最初の妻和子は昭和14年12月脳溢血で急逝。)

 s-ツツジ20180419
 ツツジ。

 夕顔や戸による母のおももちを幼な心にあやしみしわれ

 これは処女歌集『伎芸天』(大正7年)の「根岸の思出』一連中のもの。順の父は宮中顧問官文学博士川田剛。生母はその父の側室で蔵前の商家の女、本田かね。そうことで順は父の家には住むことができず、生母と共に根岸の別邸に住み、明治26年生母の病没後は妹美佳子とともに牛込の本邸に引き取られた。
 明治32年9月、第一高等学校文科に入学。島崎藤村、薄田泣菫らの感化でしきりに新体詩を作り、また近松、シェークスピアに興味を覚えて、それらの研究は爾後十余年に及んだ。
 明治25年東大文科(英文科)に入り、翌年9月法科に転籍。当時、歌の師佐佐木信綱は「君の転科については自分はまことに遺憾に堪へないでかたくとどめたのであった。然し君は之を断行した。文科は去るが文学は捨てぬと、君は自分に答へた。」と記している。卒業後は住友本店(大阪)に勤務。

 s-ツツジ⑤20190422
 ツツジ。

 寧楽(なら)へいざ技芸天女のおん目見(まみ)にながめあこがれ生き死なんかも

 大阪へ移ってからは、しきりに近畿の名勝古蹟を巡っては歌を作った。歌は、「奈良へさあ出かけて、技芸天女のその目のいろをながめ、その美しさに憧れながら、生きそして死にたいものだ」の意。

 s-ツツジ⑨20180422

 布さらし秋のあしたの眼もさやに一すぢの水山より来(きた)る 

 これは「河内柏原」にて。発想は情緒的だが、順の眼が庶民の生活に向けられていることがわかる。凛然とした秋気を感じさせる冴えた歌だ。

 s-ツバキかな20180422
 ツバキ。

 匠等(たくみら)は春のゆうべの床の上(へ)にあぐらゐ黙りはたらけるかも

 唐招提寺の講堂の中で、仏師たちが黙々と古い仏像の修繕をしている様子を歌っている。

 s-アイリスかな20180422
 アヤメ。

 鳴門の渦のまはりを渦なりに大きく廻って下りゆく船あり

 大正8年9月、窪田空穂は大阪に一週間ほど滞在した。昼間は名勝古蹟を巡り、夜は順との歓談を楽しんだ。空穂は「私たちは同窓の学生が、何もかも知り合ひぬいてゐる者が、後年再びめぐり合つた時にのみ感じるやうな親しさと安らかさを、氏の家庭から得ることができました」と記している。この空穂との対面が一つの契機となって、順は浪漫主義から写実主義への転換を遂げていく。上掲の歌は『青淵』(昭和5年刊)から。

 s-ツツジ④20180419
 ツツジ。

 わたの原秋近けれや天雲の寄り合ひのはてのいやはろかなる

  s-菜の花20180422
 ナノハナ。

 薬師岳は朝日のさせる山腹(やまばら)に雪の斑点(まだら)の大きく粗き

  これは歌集『鷲』(昭和15年刊)の「立山」の連作から。『鷲』は第一回帝国芸術院賞を受けた。
  実業家としての順は、住友本社経理課長、住友製鋼所支配人、総本社総務部長を歴任後、『青淵』を上梓した昭和5年8月には常務理事に抜擢され、次期総理事の席が約束されているかのように見えていた昭和11年5月、突然辞職。以後、文筆家としての活躍はめざましく、歌集以外の著作も次々と刊行した。 

 s-ツツジ③20180419
 ツツジ。

 見上ぐらく山原のそらを飛ぶ鷲の大き翼の白班(しらふ)かがよふ
 
 s-シャクヤクかな20180422
 ボタン。

山空をひとすぢに行く大鷲の翼の張りの澄みも澄みたる  

 s-ツツジ②20190419
 ツツジ。
 
 立山の外山が空の蒼深み一つの鷲の飛びて久しき

 s-シャクヤクか牡丹か②20180422
 ボタン。
 
 大鷲の下(お)りかくろひしむかつ山竜王岳は弥(いや)高く見ゆ 

 s-シャクヤクか牡丹か20180422
 ボタン。

 川田順は「文科は去るが文学は捨てぬ」と言った通りの人生を生きた。凄い人がいたのだと、今回も勉強になった。

 昨日・今日は夏日。昨年から今年にかけて「前期高齢者」と呼ばれるようになった同級生諸君、熱中症にも油断召されるな!!
プロフィール

kantarou+5

Author:kantarou+5
週末の近郊里山徘徊を楽しみつつ、足腰の衰えを防止しています。読書やドライブも好きです。

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