腐草為蛍(くされたるくさ ほたるとなる)

「腐草為蛍」は24節気「芒種」の次候(6/11~15)。水辺の草むらで蛍が孵化する頃の意。

 菖蒲(あやめ)見んと遠くも来たり堀切の古りし板橋ながきを渡る(窪田空穂)
 s-花20170611

 大方は山野草にて春の芽の出づるをひざまづきて見廻す(東山三代)
 s-蜂20170611

 うち伏して風の無頼をゆるしゐる草千本に思慮ふかむなり(岸本節子)
 s-水田20170611

 廃駅をくさあぢさゐの花占めてただ歳月はまぶしかりけり(小池光)
 s-紫陽花20170611

 帰り来ればわがもの顔に匂ふ百合ひとの影うすき家となりたり(生田澄江)
 s-花②20170611

 皮膚呼吸してゐる樹々か 眼差しの透くやさしさに風充ちて来よ(牛山ゆう子)
 s-緑陰②20170611

 このところ立て続けにいい本に巡り会っている。先ずは須賀敦子。「ミラノ 霧の風景」、「コルシカ書店の仲間たち」、「旅のあいまに」(河出文庫・須賀敦子全集第1巻)。芳醇な日本酒をちびちび且つ長々と飲んでいるような快感。巻末の池澤夏樹氏の解説もいい。曰く、『①彼女の執筆活動は最晩年の十年ほどに集中的に行われた。②彼女の書いたものはエッセーであって、時として小説に近づいたけれども、小説そのものにはならなかった。③彼女が書いたのは、そのほとんどがイタリアという異国の話であった。書いたのは自分のイタリア生活であり、その意味では創作ではなく報告であった。しかし、彼女はそのエッセーにおいて見事な成果を上げて多くの読者を獲得し、一流の文学者の列に加わった。』

 野澤千絵「老いる家 崩れる街」(講談社現代新書)。彼女は都市工学専攻の工学博士。国や地方自治体の野放図な「規制緩和」が何を引き起こしているのか、節税対策のアパート経営がなぜ破たんするのか、高層マンションのオーナーになることの危険性等々。

 「ドナルド・キーン自伝」、中央文庫。これは2006年にほぼ1年間に亘って読売新聞土曜日朝刊に連載された自伝。現在95歳になるが依然としてスーパーマン的な活躍が続いている。『知の巨人』は老いることを知らないらしい。

 今晩から読もうとしているのは、カズオ・イシグロの「日の名残り」 !

皆さま、お元気にお過ごしください。 

紅花栄(べにばなさかう)

 「紅花栄」は24節気「小満」の次候。紅花の咲く頃の意(5/26~30)。

 これからの5枚は5/21、いわきにて。

 堪へてあればしづかに時のすぎゆかむ紅さし指のうすきくれなゐ(中野照子)
 s-バラ20170521
 バラ。

 旅をおもふこころしずめて北国より送りきたりし鰤の身をそぐ(木俣修)
 s-紫の花20170521
 ジャーマンアイリス。

 素のからだ 素のこころ ただそれのみをしたわしきものとせつに念うも(坪野哲久)
 s-じゃがいもの花20170521
 ジャガイモ。

 牧水をなぐさめまつるひさご酒碑に置くときに瓢は鳴りぬ(若山旅人)
 s-白い花20170521
 コデマリ。

 うすものの袋に清水溜めむとし童女はあそぶいたましきまで(佐竹彌生)
 s-紫の花②20170521
 シラン。

 ここからは5/27、いつもの内牧公園。

 まぼろしにちいさこどもみてしより老い人は孤獨に襲はれしなり(葛原妙子)

 s-オニタビラコ20170527
 オニタビラコ。

 はるかなる星にも風の吹けるかとおもへば夜の心なぎゆく(鵜飼康東)
 s-なんとか麦20170527
 ネズミムギかな。

 綿菓子の機械からからまわりつつ心ときめくこと世にぞある(川口常孝)
 s-オヤブジラミ20170527
 オヤブジラミ。

 光れるは水のみとなる真夜中にしろがねのごときわが渇きあり(栗木京子)
 s-白い花20170527

 ひとつ時代を分け合いたりし感傷も追うに襤褸のごとく切れぎれ(近藤芳美)
 s-新芽20170527

 明るくも暗くもならずならず生きゐるはおまへの特技明日咲く朝顔(池谷しげみ)
 s-紫の花20170527
 ムシトリナデシコ。

 ほどほどの陰気が好きで躁の日はマーラーなどの憂愁音楽(高島静子)

 皆さま、お健やかにお過ごしください。

 

 

 

蚯蚓出(みみずいでる)

 「蚯蚓出」は「立夏」の次候。新緑の美しい時季、蚯蚓があちこちに這い出す頃の意。5/10~5/15。

 桃太郎と金太郎勝負することなしされどああ少し金太郎すき(馬場あき子)
 s-野原②20170514
 ノゲシ、イヌムギ、ネズミムギなど。

 目的持たぬ読書の楽しさを老いてまた知る若き日のごと(窪田空穂)
 s-春の花々20170514
 ハルジオンとノゲシ。

 あな旨(うま)と師の食みたまふ塩鮭を食めば強烈にしほからかりき(高野公彦)
 s-白い花20170514
 マメグンバイナズナ。

 ホメロスを読まばや春の潮騒のとどろく窓ゆ光あつめて(岡井隆)
 s-野原③20170514
 ヤブガラシ。

 月下独酌一杯一杯復一杯はるけき李白相期(あいき)さんかな(佐佐木幸綱)
 s-野原20170514
 チガヤとスイバ。

 いにしえの王(おおきみ)のごと前髪を吹かれてあゆむ紫木蓮まで(阿木津英)
 s-ヒトデか20170514
 アブラナ科の果実。

 大空に白鯨のいるあさぼらけ桃咲く村の深きねむりに(上野久雄)
 s-黄色の花20170514
 キツネノボタン。

 舞ひ終へて面(おもて)はづせししばらくは誰ともしらぬわが身座れる(富小路禎子)
 s-紫の花②20170514
 アメリカフウロ。

 夜気沁むる天秤室に分銅の銀と試薬の保つ平衡(鈴木善三)
 s-ムラサキゴケ20170514
 ムラサキゴケ。

 並び解く爺と少年のつるかめ算柿の若葉の照る縁先に(福田源子)
 s-ムラサキツメクサ20170514
 ムラサキツメクサ。 

 草の下にかくれゐる牙 芽の字を子に教へつつ不意に怯ゆる(杜澤光一郎)

 あいにく今日は厚い雲が垂れ込めた一日。それでも14時過ぎから内牧公園へ。糖質ダイエットの効果覿面で腹囲は大幅減少。内牧公園散策も一層楽しくなった。皆さま、お元気にお過ごし願います。

蛙始鳴(かわずはじめてなく)

 「蛙始鳴」は24節気の「立夏」の初候(5/5~9)。端午の節句、そして立夏。蛙も鳴きだす頃の意。

 あふれ出て路上にみなぎりさらにあふれとめどなしとめどなし春昼(しゅんちう)の泉(加藤克巳)
 s-春の花群20170507
 コメツブグサとユウゲショウ。

 春昼は大き盃 かたむきてわれひと共に流れいづるを(水原紫苑)
 s-ツツジ20170507
 ツツジ。

 天上に大風ありや知らずして矮鶏(ちゃぼ)が雛抱くこの小世界(斎藤史)
 s-ナズナ20170507
 ナズナの果実。

 春天の青の充実 人はいま水晶色の管楽器なれ(築地正子)
 s-ヤグルマソウ20170507
 ヤグルマソウ。

 日だまりの芝生に背を干す老女いて仏のような顔に居眠る(上川原紀人)
 s-ユウゲショウ20170507
 ユウゲショウ。

 たんぽぽのぽぽのあたりをそつと撫で入り日は小さきひかりを収(しま)ふ(河野裕子)
 s-黄色の花20170507
 オニタビラコ。

 この空に数かぎりない星がありその星ごとにまた空がある(沢田英史)
 s-何かな2017057
 オヤブジラミ。

 惚けたる実家の母がふり向きしやうこの青空のやさしき皺は(河野裕子)
 s-何かな②20170507
 アメリカフウロ。

 さ緑のしづけき細葉けぶらはせ metaseguoia(めたせこいあ)春の天柱(駒田善治朗)
 s-何かな③20170507

 ぴかぴかと青天域過ぎぐいぐいと曇天域に入り行く一機(多久麻)
 s-紅葉20170507

 よるべなき沈黙(しじま)といへど濃密に苔さく上をひかり移ろふ(小中英之)
 s-シロツメグサ20170507
 シロツメグサ。

 予報は晴れ されど緑の傘をさし春へ春へとわけ入らんかな(さいとうなおこ)
 s-紫の花20170507
 ジャーマンアイリス。

 さはやかな風と光に育まれ樹々は季節の貌となりゆく(篠原恒子)
 s-紫の花②20170507
 キツネアザミ。

 日だまりの笹生にまろび仰ぐ蒼(あお)歓喜おそひ來山のうへの空(窪田章一郎)
 s-白い花20170507
 ツバキ。

 徐行する列車の窓に川底の泥に陽のさす処見えたり(高安国世)
 s-白い花②20170507
 ウノハナ。
 
 春の雨は蜜を含みて降るならむほとほとと来て身をば緩めつ(斎藤史)
 s-白い花③20170507
 ハルジオン。

 春の陽を容れたる空のおそろしき深さよ深きに罅(ひび)のごとく雲(島田修三)
 s-白い花群20170507
 フランスギク。

 囀りをふところ深く容れて立つ一樹の無想の姿見上げつ(羽生田俊子)

 いい季節になりました。皆さま、お健やかにお過ごしください。

今日は午後の陽の中で

 5/4、好天。午後、内牧公園に向かうも駐車場は満杯、そこで白岡運動公園へ。こうして今日撮った写真を眺めてみると、午前と午後では光の感じが違う。午後のほうが陰翳豊かかな。

 片がはに夕日を受けて輝ける樹が見ゆあたたかき魂が見ゆ(藤井常世)
 s-新葉⑧20170504
 ベニカナメモチ。

 皮膚呼吸してゐる樹々か 眼差しの透くやさしさに風充ちて来よ(牛山ゆう子)
 s-新葉⑦20170504
 アカシデかな?

 いのちある木草のあはれ季(とき)くれば追はるるごとくつぎて花もつ(大岡博)
 s-新葉⑥20170504
 ベニカナメモチ。

 幾千の鳥葉かげにひそませて巨木一向に知りもせぬ如く(中河幹子)
 s-新葉⑤20170504
 ハナミズキ。

 山脈も芽ぐむ木立も遠く澄み空からこはれてくるやうな日よ(大西民子)
 s-新葉④20170504

 ゆすぶってやれゆすぶってやれ 木だって人間だって青い風が好きだ(宮崎義信)
 s-新葉③20170504

 一本の棒たりし木が時を経て梅に辛夷に桜になれり(小野光恵)
 s-新葉②20170504

 かなしみは明るさゆゑにきたりけり一本の樹の翳らひにけり(前登志夫)
 s-新葉20170504

 花終へし樹々のすがしき静謐(しづ)もりに佇みしばし吾も安らふ(新絹枝)
 s-山吹20170504
 ヤエザキヤマブキ。

 「崑崙の黒」とふ椿咲き残り雨のはれまを朱(あけ)のきはまる(宮柊二)
 s-ツバキ20170504
 ツバキ。

 9連休の6日目もいい日だった。小川糸の「ツバキ文具店」を読み終えて妻に薦めたら、「それってNHKの『鎌倉代書屋物語』では」との反応。ピンポーン。次いで今日は乙川優三郎の「R.S.ヴィラセニョール」に取り掛かったが、こちらは「ツバキ文具店」と同じスピードでは読めない。時代物を書いていた乙川優三郎が新境地に挑んでいる。こんな日々を暮らしていると9連休では足りないかも。
 皆さま、お健やかにお過ごし願います。

 
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kantarou+4

Author:kantarou+4
週末の近郊里山徘徊を楽しみつつ、足腰の衰えを防止しています。読書やドライブも好きです。

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