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石激 垂見之上乃 左和良妣乃 毛要出春尓 成来鴨 (志貴皇子)

 今年のタイトルは『万葉集』から。 原文は、石激 垂見之上乃 左和良妣乃 毛要出春尓 成来鴨 〔いわばしる 垂水(たるみ)の上の さ蕨(わらび)の 萌え出づる春に なりにけるかも〕。「岩を流れる滝のほとりのワラビが芽を出してくる春になったんですね」の意。

 今回の短歌は「セーラー服の歌人 鳥居」(岩岡千景著・KADOKAWA・2016年2月10日刊)から。「鳥居」は小学生の時に母が自殺、小学校中退、施設での虐待、ホームレス生活・・・、拾った新聞で字を覚えたという。歌人としては「鳥居」という姓だけを名乗り、名はない。

 いつの日も空には空がありました母と棺が燃える真昼間
 
 s-水温む20190305
 今回の写真は全て3/5、2日間続いた雨が上がった春日部・内牧公園。7時過ぎから約1万歩の散策。

 対岸に灯は点りけりゆわゆわと泣きじゃくる我と川を隔てて

 s-菜の花20190305
 ナノハナ。 (青字の植物名は全てS先輩からご教示いただいた。)

 風鈴を窓辺の箱にしまい終えその箱の崩れやすさを思う

 s-春の日射し20190305
 トウジュロ。

 標準語強いられるとき転校は味方のいない街へ行くこと

 s-春20190305
 オランダミミナグサ。

 あおぞらが、 妙に乾いて、 紫陽花が、 あざやか なんで死んだの

 s-枯葉と新葉20190305

 枯れた葉を踏まずに歩く ありし日は病に伏せる母を疎(うと)みし

 s-枯れ葉と新芽20190305

 書きさしの遺書、 伏せて眠れば 死をこえてあいにおいでと 紫陽花が咲く

 s-柿裸木20190305

 理由なく殴られている理由なくトイレの床は硬く冷たい

 s-果樹園の前20190305
 ニラ。

 爪のないゆびを庇(かば)って耐える夜 「私に眠りを、絵本の夢を」

 s-雨上がり⑧20190305
 コブシかな? 

 永遠に泣いている子がそこにいる「ドアにちゅうい」の腫れた指先

 s-雨上がり⑦20190305
 オオイヌノフグリ。

 朝焼けを坂の上から見送れば私を遠く避ける靴音

 s-兵馬俑20190305

 警報の音が鳴り止み遮断機が気づいたように首をもたげる

 s-雨上がり⑥20190305
 ナズナ。

  夜の海に君の重みを手放せば陶器のように沈みゆく首

 s-雨上がり⑤20190305
 ノボロギク。

 ひたひたと廊下を歩く ドアがあく イスに座って 被害を話す

 s-雨上がり④20190305
 スイバ。

 刃は肉を斬るものだった肌色の足に刺さった刺身包丁

 s-雨上がり③20190305

 海底にねむりしひとのとうめいなこえかさなりて海のかさ増す

 s-雨上がり②20190305

 壊されてから知る 私を抱く母をしずかに家が抱いていたこと

 s-雨上がり20190305

 大きく手を振れば 大きく振り返す 母が見えなくなる曲がり角

 s-テリハノイバラ20190305

 体温計くわえて窓に額つけ「ゆひら」とさわぐゆきのことかよ (穂村弘)

 「寒い冬の日。家の中の暖かい部屋で、体温計をくわえた病み上がりの子どもが窓に額をつけ、目を見開いて『ゆひら(ゆきだ)』と騒いでいる。それをそばで見ている父が『ゆきのことかよ、なーんだ』という顔をして眺めている・・・。そんな温かい家庭の光景が頭のなかに広がりました。そして、幸せな気持ちになりました。」(本文から) この一首との出会いで、鳥居は短歌に興味を持ったとのこと。

 洪水の夢から昼にめざめれば家中の壜まっすぐに立つ (吉川宏志)

  『一首の中に死と美しさ、そして違和感がない果てしない広がりを持っていることに感銘を受けた。』とも。

 鳥居は2012年、全国短歌大会で佳作入選。2016年、『キリンの子』を上梓、2017年、現代歌人協会賞を受賞。
 また、2012年ころより、自らが形式的には中学校卒業者であるが、実質的には小学校中退状態であること、義務教育を学び直したくとも学べない境遇の人がいることを伝えるため、取材などの公共の場ではセーラー服を着用している。鳥居のこの活動などを受け、2015年7月には文科省が形式卒業者を夜間中学校で受け入れるよう全国の教育委員会へと通知した。
 セクシャルマイノリティ向けに「虹色短歌会」、生きづらさを抱えた人のために「生きづら短歌会」などを行う。(Wikipediaより)

 さて、還太郎は農業簿記3級講座を無事終了。2018年度の試験問題に挑戦したら、100点満点⁉ 。但し、自宅でテキストと問題集を参考にしながら。電卓で加減乗除の計算をすると何度やっても合わないので、パソコンの計算ソフトも使用。
 果樹の育成中の経費は「育成仮勘定」という科目で資産として扱い、果樹の出荷を始めたら「減価償却費」としてコスト計上することなど、農業ならではの簿記を学び、楽しい講習だった。テスト本番は7/7。それまでには大方忘れてしまうのではと危惧・・・。

 皆さま、もう3月ですね。水も温み始めました。いい季節を楽しみましょう。どうぞ、お元気で。 

 
 

敬頌新禧(けいしょうしんき)


 遅ればせながら、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

 s-IMG_0382.jpg
 元旦、6時54分、いわき市勿来海岸。妻がスマホで撮影。

 今回のテキストは『ホームレス歌人のいた冬』(三山喬 著、東海大学出版会・2011年3月刊)から。

 (柔らかい時計)を持ちて炊き出しのカレーの列に二時間並ぶ (ホームレス・公田耕一)

 この歌は2008年12月8日、朝日新聞の歌壇に掲載された。 「柔らかい時計」は、スペインの画家ダリの代表作『記憶の固執』に描かれたモチーフ。まるで高熱でとけてしまったのように、段差の上に置かれた時計の盤面は、自らの重みでぐにゃりと折れ曲がっている。別の時計は、木の枝に洗濯物のようにふたつ折れにぶら下がっている。

 ホームレスを名乗る投稿者は、炊き出しの順番を待つ忍耐力をこの比喩で示そうとしたのか。それとも、空腹のなかで時間感覚が溶けるようにひしゃげてしまったさまを歌ったのだろうか。

 s-鮫川河口20190104
 1/4、鮫川河口と太平洋。川の中央部の二つの黒ポチは釣り人。

 鍵持たぬ生活に慣れ年を越す今さら何を脱ぎ棄てたのか

 公田の短歌は、2008年12月~翌年1月にかけて計6首が採用された。朝日歌壇には毎週2,500~3,000首が寄せられる。掲載されるのは4選者の欄に計40首だから、「常連」として読者に認識されるハードルの高さがわかるだろう。公田はその難事をわずか数週間で果たしてしまった。「公田」をテーマとする短歌も掲載され、このあとも長く続く。

 炊き出しに並ぶ歌あり住所欄(ホームレス)とありて寒き日 (武富純一、2008・12・22)

 一日を歩いて暮らすわが身には雨はしたたか無援にも降る 
  
 s-内牧公園20190106
 (以下の写真はすべて1/7・@春日部)

 パンのみで生きるにはあらず配給のパンのみみにて一日生きる

  s-内牧公園②20190106

 親不孝通りと言へども親もなく親にもなれずただ立ち尽くす
 哀しきは寿町と言ふ地名長者町さへ隣りにはあり

 公田の投稿ハガキの消印は「横浜」。寿町も長者町も横浜市中区の地名。公田に関する個人情報はこれだけ。

 s-内牧公園④20190106

 美しき星空の下眠りゆくグレコの唄を聴くは幻 

 1951年、フランスの歌手ジュリエット・グレコが吹き込んだ曲『美しき星の下に』を知る人は、シャンソン愛好家にも少ない。スペインのシューレアリスム画家に続いて、今度は「実存主義の女神」と呼ばれ、銀幕でも活躍した美貌の歌姫である。天声人語氏には、作品ににじみ出る公田の教養が、あまりに深く思えることへの違和感もあったのだろう。「ホームレスという境遇までが『作品』なのか、確かめようはない。知りたくもあり、知りたくもなし。」と戸惑いを綴っている。

 s-内牧公園⑤20190106

 胸を病み医療保護受けドヤ街の柩(ひつぎ)のやうな一室に居る

 囚人の己れが<(ホームレス)公田>想いつつ食むHOTMEALを (郷隼人)
 *郷隼人。アメリカで殺人事件の終身犯として20年以上収監されている日本人受刑者。

 温かき缶コーヒーを抱きて寝て覚めれば冷えしコーヒー啜る

 s-内牧公園⑥20190106

 我が上は語らぬ汝の上訊(き)かぬ梅の香に充つ夜の公園
 *「上」は「身の上」のこと。

 生きていれば詠めるペンあれば書けることを教えてくれたホームレス公田氏 (甲斐みどり)
 
 s-内牧公園⑦20190106

 瓢箪の鉢植えを売る店先に軽風立てば瓢箪揺れる

 2009年9月7日。この日掲載された歌を最後に、公田の作品は朝日歌壇から姿を消す。初掲載から最後の作品までが丁度40週。公田の作品の中に「毎週2首投稿している」という歌があるが、計80首投稿して28首の入選。打率3割5分。朝日歌壇の全体の採用率は2%に満たないわけだから、この「打率」はすさまじい。
  
 s-内牧公園⑧20190106
 *この写真は逆さまではなく、枝が折れて垂れ下がっている姿。

 寒くないかい淋しくないかい歌壇でしか会えぬあなたのしばしの不在 (井村公司、2009・11・16)

 先ほどNHK福島が、いわき市三和町では福寿草が咲き揃っていると紹介。昨年の冬至は12月22日。それから3週間弱であるが、大分日が長くなったような気がする。風の冷たさは増すばかりでも、福寿草も咲き、還太郎宅のヒヤシンスも満開。明日が穏やかな天気ならば両実家の植木に寒肥(かんごえ)を施すかと思案している。草木灰はたっぷり用意してある。さすがに年末年始は野良仕事も休止していたので、腹回りが若干肥大化傾向。明日からは定常運転に復帰する予定。

 皆さま、お健やかにお過ごし願います。

   

拖泥帯水(たでいたいすい)

 「拖泥帯水」は苦しみにまみれている人を、慈悲の心を持って共に生活することで救済すること。今年のタイトルは漱石『草枕』の難解熟語。

 今回も短歌は『昭和万葉集秀歌 【三】 四季・自然』(講談社現代新書・上田三四二編、昭和60年1月刊)から。作者名の後の数字は昭和何年の、或いは何年何月の発表かを示す。

 朝富士の紺青に澄める頂に茜及びて起伏見え初む (葛原繁・39.10)

 s-パープルスイートロード③20181017
 先ずはサツマイモの収穫状況。ご覧の通りの豊作。品種は「パープル スイートロード」。

 天城嶺(あまぎね)は 母の山かも。常仰ぎ しかも忘れてゐつつ 心底(した)恋ふ (穂積忠・30)
 
 s-パープルスイートロード20181017
 割と大きさも揃っている。柔らかい土なので、スコップを差し込んで、その柄を手前に押し下げると、ゴソッとサツマイモが浮き上がってくる。あとはツルを持って引き上げるだけ。

 おのづからまな鶴なべ鶴棲み分けて川越えし田に群るるなべ鶴 (木田節子・43.3)
 
 s-シルクスイート20181018
 こちらは「シルクスイート」。大きさが不揃いであるばかりか、長芋かゴボウのような長尺品もあり、掘り起こすのは難行苦行。こんな不揃いなのは初めてと妻が嘆く。幸いにして他の列はこれほど不揃いではない。
 もう一つの問題は売行き不振。JAの直営販売店3ヶ所、イオンのJAコーナーなど計4ヶ所で販売しているのだが、思ったほど売れない。義母がお世話になっているデイ・ケア施設や知り合いの料理店、その他に20~30kgほどを無償提供。更には畑の脇を通りかかった知人にも配布。「撒き餌」効果があるいいのだが・・・。来年は好物の芋焼酎でも作ろうかな?

 雲は地に結ばれてゐてその黒き影を錘(おもり)のごとく曳きをり (水上正直・51)

 s-ケイトウ20181017
 変わった色のケイトウ。

 散る花のうへにまた散る山茶花のさながら白き夕ぐれのとき (佐藤志満・53)

 10/23、都内で会食、6時半開始。5名で大いに盛り上がり、お店の方に「もう11時になるので閉店したいのですが・・・」と注意されるまで、そんな時間になっているとは全く気が付かなかった。茨城にいたときのお客様がお相手。以下の写真は24日春日部内牧公園で。今頃咲くの? と再三思わされた花が多かった。
 
 s-ナノハナ20181024
 ナノハナ。 

 十年(ととせ)経てふたたび来れば移りゐる雲ひとつ那智の滝のしづかさ (佐藤佐太郎・45)

 s-ユウゲショウ20181024
 ユウゲショウ。

 飛火野(とぶひの)に小雨ふる日は鹿の群ひとかたまりとなりて濡れゐつ (市橋りえ・44.11)
 *「飛火野」=奈良市外の東方を占め、興福寺・東大寺・春日大社・国立博物館と一体となり、さらに若草山から春日山原始林までを取り込んで広大な公園となっている。

 s-白い花20181024
 ハナイバナ。 S先輩からご教示有り。青字は以下同様。

 何に触るる音としもあらず揉みあひて谷のぼりゆく夜の風音 (中山礼治・46.6)

 s-ホトケノザ20181024
 ホトケノザ。

 竹は内部に純白の闇育て来ていま鳴れりその一つ一つの闇が (佐佐木幸綱・51)
 
 s-白い花②20181024
 タネツケバナかな。

 庭土の白く乾きて八つ手咲くこの宵頃は星冴えて見ゆ (淵浩一・5)

 s-黄色の花20181024
 ハキダメギク。

 墓捨てし吾を責むると外(と)に立てば氷雨は過ぐる相模野の丘 (前田透・47.3)

 s-紫の花20181024
 ノアサガオ。

 避難小屋の石置く屋根のあらはれて信濃側より霧はれむとす (亀村佳代子)

 s-田植え済みかな20181024
 水を入れれば田植え後の姿の田んぼ。

 山深く音にたちくる秋の雨つるうめもどきのくれなゐ寒し (渡辺直吉・14.9)

 s-白い花③20181024
 ヒメジオンかな。

 夕日かげかげりし原によごれたる山羊ひとつ居て風に吹かるる (堀内通孝・16)

 s-不明20181024

 夕陽さす黄葉(もみぢ)の谷に鳴きかへる猿(ましら)の声は山にひびきぬ (丸田嘉雄・6.4)

 s-白い花④20181024

 ゆく秋のわが身切なく儚(はかな)くて樹に登りゆさゆさ紅葉(こうえふ)を散らす (前川佐美雄・15)

 s-ヘクソカズラ20181024
 ヘクソカズラ。

 よりそへば壁も柱もわが影もひえびえしめる秋の夜の雨 (九條武子・3.2)

 s-ノコンギクかな20181024
 ノコンギクかな?
 
 雷鳥の立ちし岨路(そばぢ)に杖とめて見放(みさ)くる尾根を雲ながれゆく (鈴木将剛)
 
s-クズの葉20181024
 クズの葉。
 
侘しきとき侘しさ誘ふ檻の中に孔雀はよごれし羽根をひろげぬ (桜井鬼怒夫・28)
 
 s-クコ20181024
 クコ。 

よひよひの露ひえまさるこの原に病雁(やむかり)おちてしばしだに居よ (斎藤茂吉・25)

 s-キバナコスモス2018124
 キバナコスモス。

 山空をひとすぢに行く大鷲の翼の張りの澄みも澄みたる (川田順・15)

 s-お茶の花20181024
 お茶の花。

 柵あり牧舎あり烏なきて声はこだまに帰ることなし (土屋文明・10)

 s-イヌタデ20181024
 イヌタデ。
 
葉脈の硬き薊(あざみ)を食(は)み終えし兎はしずかにあかき眼ひらく (小松北溟・49.11)
 
 s-アザミかな20181024
 アザミかな? ノゲシ(別名ハルノノゲシ)。

 ひと房の葡萄を持てばきみが手に流るるごとく秋の紫 (福田栄一・23.9)

 s-テリハノイバラとクズの葉20181024
 テリハノイバラとクズの葉。

 今日(10/27)は8時前後にやや強い雨があり、畑が濡れてしまったのでサツマイモ掘りはお休み。昨夜も会食がありややお疲れモードの還太郎には、「干天の慈雨」。全部掘り尽すには、あと5日ほどかかるかな。足腰が鍛えられる。
 皆さまもお元気にお過ごし願います。

俗累の覊絏(ぞくるいのきせつ)

 「俗累の覊絏」。「俗累」は日常のこと、世間の煩わしいこと。「覊絏」はたづな、転じてつなぎとめること。漱石は「草枕」に曰く、「「俗累の覊絏牢として断ちがたきがゆえに・・・」。つまり、世俗の煩わしいことからはなかなか脱し難いと。 

 さて、今回は前田夕暮(明治16年7月27日~昭和26年4月20日。神奈川県出身)。テキストは「わが愛する歌人 第一集」(有斐閣新書・昭和53年8月刊)。解説は石本隆一。

 自然がずんずん体のなかを通過する---山、山、山
 s-日光連山20180107
 1/7、春日部日帰り。利根川に架かる芽吹大橋(茨城県坂東市と千葉県野田市を結ぶ)付近から、日光連山を望む。
 冒頭の短歌は、夕暮がはじめて旅客機に乗り、丹沢山塊の上空を飛んだ時の印象を詠んだもの。

 木に花咲き君わが妻とならむ日の四月のなかなか遠くもあるかな
 s-緑の葉20180107
 (以下の写真は全て春日部・内牧公園にて)

 朝風に吹きあふらるる青樫のざわめくみれば既に春なり
 s-蓮20180107
 夕暮はその生涯に、いく度かの断念と再生を繰り返している。その最大のものは創刊して8年、会員700名近くを擁する「詩歌」を何の予告もなく「われとわが家に火を放つ」ように廃刊してしまったことであろう。
 
 
 朝はまだ冷たき山の五月なり朴の丸太のうす青みたる
 s-百舌20180107

 前田夕暮は、大正12年の元旦から1ヶ月ばかりの間に突如600余首を歌いだした。夕暮れは、それまで4年間ほどにわたって、率いる結社を廃し、歌壇とも離れ、逼塞するように山林経営に従っていたのだが、ふたたび堰を切ったように作歌者への意欲が湧出したのである。
 夕暮の歌には、青い色がきわめて多く詠み込まれている。それも緑を仮称する青ではなく、研ぎすまされたような青色が映しだされている。むしろ、光線そのもののもつ蒼白に近い色調かもしれない。夕暮は糖尿病と診断され、病に原因する白内障から、ものがみな青く見える青視症であったという。

 赤く錆びし小ひさき鍵を袂にし妻とあかるき夜の町に行く
 s-冬陽⑫20180107

 うす青くレーンコートを濡らして、芽吹きかけた雑木林を行く、雨上がり !
 s-冬陽⑪20180107

 こゝろよき飢えをそそりて新しき牡蠣ぞにほへる初秋のあさ
 s-冬陽⑩20180107

 五月の青樫の若葉が、ひときはこの村をあかるくする、朝風
 s-冬陽⑨20180107

 空にむかって、一せいに大きく口をあいている岩燕の朱い咽喉をみた
 s-冬陽⑧20180107

 山崩(なぎ)あとの一面あかき日の光雉子(きぎす)尾をひきいでて遊べる
 s-冬陽⑦20180107

 向日葵は金の油を身にあびてゆらりと高し日のちひささよ
 s-冬陽⑥20180107

 路の辺の蕗のをさな葉つみとりて匂ひかぎをり若き日のごと
 s-冬陽④20180107

 麦の穂枝が白く光る季節となり、野はあかるく廻転窓をひらく
 s-冬陽③20180107

 山の秀にのこる日かげをみたりけり妻にもみよとわがいひしかも
 s-冬陽20180107②

 林間のうす青みたる朴の木の幹に歯をあて噛める馬あり
 s-冬陽20180107

 第二次大戦の戦中から戦後にかけて、老いた夕暮は疎開地の秩父山中で石塊だらけの荒土を開墾し、健康を大いに損ねている。そのときでさえ、その生活を決して虚勢ではなく、すなおに受け入れ、実際に楽しんでいる。
 
 老妻の待つらむ家に帰らなむふるさとに似しこの坂道を
 s-切株20180107

 摘みとればはやくろぐろと枯れそめぬ冬磯山の名も知らぬ草 
 s-ススキ20180107

 日の下の夢みる如き眼をあげて青き小いさき蛇われをみる 
 s-光の先に20180107

 山川の早瀬にのぞむ崖上の終の栖(ついのすみか)に夕日さしそふ

 「夕暮」の雅号は、新古今集にある西行の歌からとったとのこと。

 心なき身にもあはれはしられけり鴫たつ沢の秋の夕暮

 土浦市は現在(12:58)8℃。 陽がさしているが、15時以降は降水確率50%、17時以降80%、20時以降100%。 皆さま、お健やかにお過ごし願います。

綿柎開(わたのはなしべひらく)

「綿柎開」(8/23~27)は24節気「処暑」の初候。綿の花が咲き始める頃の意。

 今日(27日)は好天。春日部に出掛けたついでに、内牧公園へ。5kmほど歩いたところで、車へ戻る。無茶はいけません。
 今回の短歌は、講談社現代新書「昭和万葉集秀歌」全3冊の「三」から。編者は上田三四二。昭和60年1月20日第一刷発行。

 忘れゐしものの心地に佇(た)ちて聴く夕日の丘のかなかなの声 (太田青丘)
 s-荒地に咲く20170827
 ヒャクニチソウ。(植物名はS先輩からご教示いただきました)

  神のおそれひたにおもひつ葉ごもりにせみしぐれせる日ざかりをゆく (三島由紀夫)
 s-残暑2017027
 オオブタクサ。

 沈黙のわれに見よとぞ百房の黒き葡萄に雨ふりそそぐ (斎藤茂吉)
 s-ユリ20170827
 タカサゴユリ。 

 ひぐらしの一つが啼けば二つ啼き山みな声となりて明けゆく(四賀光子)
 s-栗5人兄弟20170827
 
  まどろみより覚めてかなしも蝉の声ききつつまどろみゐし夕つかた(生駒あざ美)
 s-残暑②20170827
 コウゾ。

 野づらには野づらの風が窓辺には窓辺の風が秋をもたらす(岸野澄)
 s-ヤブカラシ20170827
 ヤブカラシ。

 むしあつき鼓動をもちて颱風の風圧(お)しきたる夜の稲田より(板宮清治)
 s-ヘクソカズラ20170827
 ヘクソカズラ。

 盆灯籠に灯を入れるときひとりなる余生に今年の蜩(ひぐらし)きこゆ(富田住子)
 s-センニンソウ20170827
 センニンソウ。

  ひとつの窓あけてわが聴くまぼろしの天の奥処(おくか)のかなかなのこゑ(清原令子)
 s-セイバンモロコシかな20170827
 セイバンモロコシ。

 夏尽くるあはれを持ちてひたすらに萩咲きそめし岬山(さきやま)に来つ(堀江伸二)
 s-ガガイモ20170827
 ガガイモ。

 去年(こぞ)よりもかなしみ重き秋にして透りくる陽にてのひらかざす(斎藤春子)
 s-残暑③20170827
 コスモス。

 稲原の早稲穂にしろく照る月は夜ごとに明し山の峡(かひ)にも (中村憲吉)
 s-実りの秋20170827

 拾ひきて夜の灯に愛しむ秋蝉のあかがねいろのぬけがらひとつ(杜沢光一郎)

 今回のブログは8/27に作っていたのだが、一時保存して、Windowsのバージョン・アップを行ったら不調になり、ブログ作成は断念。今日8/29は風邪で会社を休んだ。パソコンをいじっていたら、なんとか復旧。だんだんこういうことが面倒になる。もうバージョン・アップは結構だと思うのであるが、利便性向上とかウイルス対策の強化とか謳われているとついつい更新してしまう・・・(;´д`)。

 風邪をひいてしまった私が言うのもなんですが、皆さま、お健やかにお過ごし願います。
プロフィール

kantarou + 6

Author:kantarou + 6
畑や庭での作業を楽しんで、晩酌・早寝・早起きの毎日です。読書やドライブも好きです。

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