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霞立野上乃方尓 行之可波 鶯鳴都 春尓成良思 (丹比真人乙麻呂)

 霞立つ野の上(へ)の方(かた)に行(ゆ)きしかば鶯鳴きつつ春になるらし。(たじひのまひとおとまろ) 

 今年の短歌は万葉集から。「霞が立つ野の上の方に行ってみると、鶯が鳴いていた。春になったのだな。」の意。

 さて今回の写真はラン(蘭)。数日前、いつも植物名をご教示いただいているS先輩からメールをいただいた。下の写真は、そのメールに添付されていたS先輩のラン温室。週末は在宅していることが多いので、いつでも見にきていいよとのこと。S先輩のお住まいは還太郎のアパートから徒歩30歩・・・。昨日(3/21)、早速見学させていただいた。

 s-2019011301s-.jpg

 さて、写真を撮らせていただき品種名を写真下に記載したが、虎の巻はS先輩が自ら刊行された『洋蘭解説』正・続・別冊。194種のランの解説、写真は約500枚。似たものも多いので合っているか否か・・・。

 今回の短歌は『現代の短歌』(篠弘編・東京堂出版・2012年1月10日刊)から。この本は、100人の歌人の和歌3,840首を載せている。今回は葛原妙子さんの和歌。葛原さんは明治42年東京・本郷生まれ。昭和60年没。「生をめぐる不安や原罪意識を探る」と紹介されている。

 あやまちて切りしロザリオ転がりし玉のひとつひとつ皆薔薇

 s-ラン⑳20190321
 デンドロビウム ブラクテオスム。

 美しき球の透視をゆめむべくあぢさゐの花あまた咲きたり

 s-ラン⑱20190321
 ドリテノプシス MSピンク モモ。 

 胡桃ほどの脳髄をともしまひるわが白猫に瞑想ありき

 s-ラン⑰20190321
 シンビジウム ドクターL.F.ホーキンソン ピートモント品種は不明(S先輩からご教示あり)。

 乳白にかたまり合へる牡蠣の身に柑橘のするどき酸を絞りぬ

 s-ラン⑯20190321
 デンドロビウム サギムスメ。 
 
 星と星かち合うこがらし ああ日本はするどき深夜

 s-ラン⑫20190321
 エピデンドロム スペシャル・バレー スプリング・ベル。

 かの黒き翼掩ひしひろしまに触れ得ずひろしまを贄(にへ)として生きしなれば

 s-ラン⑪20190321
 エピカトレア レーン マルケス フレーム スワロー。

 うすらなる空気の中に実りゐる葡萄の重さははかりがたしも

 s-ラン⑨20190321
 アングレクム レオニス。

 飲食(おんじき)ののちに立つなる空壜のしばしばは遠き泪の如し

 s-ラン⑧20190321
 デンドロビウム フォーミディブルスノーレディー。

 明るき昼のしじまにたれもゐず ふとしも玻璃の壺流涕す

 s-ラン⑦20190321
 デンドロビウム ロセイぺス。

 卓上に塩の壺まろく照りゐたりわが手は憩ふ塩のかたはら

 s-ラン⑤20190321
 ミニカトレア レリア ルンディ。 レプトテス ビカラー。

 疾風はうたごゑを攫(さら)ふきれぎれに さんた、 ま、 りあ、 りあ、 りあ

 s-ラン③20190321
 調査中。 マキシラリア バリアピリス。 

 つくつくぼふし三面鏡の三面のおくがに啼きてちひさきひかり

 s-ラン2420190321
 エピカトレア キョウグチ ハッピー フィールド。

 ひるしづかケーキの上に粉ざたう見えざるほどに吹かれつつをり

 s-ラン2320190321
 セロジネ クリスタータ アルバ。

 ひえびえとかひこの毒を感ぜしむ絹の衣ながく纏へる汝(なれ)

 

 s-ラン2220190321
 シンビジウム ドロシー・ストックスチル フォアゴットンフルーツ。

 水の音つねにきこゆる小卓に恍惚として乾酪(チーズ)黴びたり

 s-ラン2120190321
 デンドロビウム アグレガツム マジュス。

 山羊の小屋わづかにひらき雪つもる 女性(にしょう)のごとく山羊はをりたり

 s-ラン①20190321
 デンドロビウム ピエラルディー。

 厨のくらがりにたれか動きゐて鋭きフォークをしばしば落せり

 おまけ。庭のモクレンが満開。今年は霜害も受けず、きれいに咲きそろった。 

 s-モクレン20190322

 春の農作業も忙しくなってきた。カブ、ホウレンソウ、カボチャ、レタス等々の発芽・成長は順調。タマネギの苗も雨不足で育ちが遅れていたが最近はグングン成長。イチジクの挿し木も20本ほど完了。今日はひしめき合っているネギを掘り起こして、1本当たり20cm程の間隔をとって移植。これから分結してどんどん増えるらしい。ウグイスの日に日に上手くなる鳴き声を聞きながら、野良仕事に精を出している。

 皆さま、元気にお過ごし願います。

あれは偽りのことばにすぎない、と。

 今回は短歌はお休み。3月上旬、詩人齋藤貢(みつぐ)さんが、『夕焼け売り』(思潮社・2018年10月1日刊)で「現代詩人賞」を受賞。齋藤さんは1954年、福島県生まれ。友人に薦められて拝読したが、心を打たれた。東日本大震災、ことに原発事故による被災がどういうことであったのか。常磐道を仙台まで下ると、沿道には「空虚」としか言いようのない光景が広がり、除染された土を入れた黒いフレコンバッグが山積みになっている。「復興は着実に進んでいる」と聞かされるたびに違和感を覚える私は、齋藤さんの詩によって、その違和感の正体を見た。 2編紹介させていただく。

     s-夕焼け売り

「夕焼け売り」

 この町では
 もう、夕焼けを
 眺めるひとは、いなくなってしまった。
 ひとが住めなくなって
 既に、五年余り。
 あの日。
 突然の恐怖に襲われて
 いのちの重さが、天秤にかけられた。

 ひとは首をかしげている。
 ここには
 見えない恐怖が、いたるところにあって
 それが
 ひとに不幸をもたらすのだ、と。
 ひとがひとの暮らしを奪う。
 誰が信じるというのか、そんなばかげた話を。

 だが、それからしばらくして
 この町には
 夕方になると、夕焼け売りが
 奪われてしまった時間を行商して歩いている。
 誰も住んでいない家々の軒先に立ち
 「夕焼けは、いらんかねぇ」
 「幾つ、欲しいかねぇ」

 夕焼け売りの声がすると
 誰もいないこの町の
 瓦屋根の煙突からは
 薪を燃やす、夕餉の煙も漂ってくる。

 恐怖に身を委ねて
 これから、ひとは
 どれほど夕焼けを胸にしまい込むのだろうか。

 夕焼け売りの声を聞きながら
 ひとは、あの日の悲しみを食卓に並べ始める。
 あの日、皆で囲むはずだった
 賑やかな夕餉を、これから迎えるために。

     s-明け方20190225


「辱められている」

 ああ必ず帰らねばならぬと、みずからに言い聞かせながら     
 あああああああああ あああ火に燃える街を迂回して     
 ああああああああああ あああああ苦しみの土地を抜けた。    

 ああああああああああああなにが大地を激しく揺らすのか。    

 ああ あああああああああああああああああ揺れの果てに     
 あああああああああああ震えているものが、海を溢れさせ     
 ああ ああああああ真夜中、高い火柱があかく空を染めた。  

 あ ああああああああああああ小雪混じりの冬空を覆って
 ああ ああああああああああああああああ震えているのは 
 ああああああああああああああああこころばかりではない。
 あああ ああああああああああああああこの世の果てまで 
 あああああああああああああ地上のすべてが震えている。
 ああああああああああ茂みに隠れて、鳥は空を飛ばない。
 あ あああ地に身を沈めて、獣はじっと息をひそめている。

      s-蕗の薹20190316

 あ あああああああああああああああどこか遠いところから 
 あ ああああああああゆがんだ大地の悲鳴が近づいてきて 
 あ あああああああああああああああああ地軸が小刻みに 
 あ あああああああああこころとからだを震わせてやまない。
 あ ああああああああああああああ息を震わせてやまない。

 あ ああああああああああああ襲ってくるただならぬ気配に 
 あ あああああああああああここにいてはならぬと促されて 
 ああ あああああひとは、いくつもの町や村を駆けぬけた。
 ああああ あああああ あああこの世で何が起きているのか 
 ああああああああああああああそれすらもわからないまま 
 あああああ ああああああああああああああ北を目指して 
 ああああああ ああああひとは、いくつもの山と川を越えた。
 ああ ああ なんども問いを反芻し、自問をくりかえしながら。

     s-モクレン20190316

 いったい誰に。
 そして、何のために。
 わたしたちはかくも試されねばならぬのか、と。

 あ あああああああああああああああああああああかつて 
 ああ あああああああああああこの地に撒かれた火の種は 
 あああああ破壊されることのない頑丈な容器に納められて 
 あああああああああああああ人の暮らしの安寧を約束した。
 ああああああああああああああああ未来永劫、永遠に、と。

 ああああああ約束はわずかな地の塩と米をもたらすだろう。

 あ ああ幾重にも防御された容器と方形の建屋のまわりで 
 あああああ あああああひとはうぶすなに祈り、土地を耕す。
 夕焼け小焼けの集落に日は沈み、地に撒かれた火の種は 
 あああああああああああふたたび朝のひかりを運んでくる。

 あああああああああああああああささやかな願いを託して 
 ああああ ああああひとは草のように地べたに生きるだろう。
 あ ああああああああああああああ日々の暮らしの傍らで 
 ああああああ歳月はつつましい約束のように訪れるだろう。
 
 あっ、山河が小刻みに震えて。
 あっ、安寧が突如破られて。
 あっ、あっ。
 あの日。
 
      s-ボケ②20190316

 あ ああああああああああああああああああああ火の種が 
 ああ ああああああああああ頑丈な容器から溶け落ちて 
 ああああ あああああああああああああ地にばらまかれた 
 あああああああああああ見えない恐怖の、むすうのかけら 
 ああああああああああああああ危うさが約束の地を揺らす。
 あああああ ああああああああ震えて縮みあがった土地に 
あああああああああああ ああああ唐突にもたらされたのは 
 ああああああ ああああああああああああ得体の知れない 
 ああああああ あああああああああああああああ地の恥辱 
 あああああああ ああああああああああああああ海の恥辱 
 あああああああ ああああああああああああああ空の恥辱 

 わかっていたはずなのに
 永遠などどこにもない、と。
 気づいていたはずなのに
 あれは偽りのことばにすぎない、と。

 あああああああああああああああああああ見捨てられて 
 あああああああああああああああああ不安に膝を抱えて 
 ああああああああああああああああああ恐怖におびえて 
 ああ ああああどれほどひとは眠れぬ夜を過ごしただろうか。
 あああああああああああああ火柱につつまれた祭壇には 
 あああああああああああむすうのいけにえが差し出されて 
 あああ あああああ海辺にはうずくまったまま息絶えたひと 
 あああああああああああああああああってはならぬことが 
 あああ あああああああああここではいたるところでおきた。

 ああ あああああああああああいのちが置き去りにされて。
 あああああああああああああああひとの暮らしが奪われて。
 あああ ああああああああこころをいくたびも引き裂かれて。

 なぜだろう。
 ここでは
 ひとであることが、辱められていて。

 いまもなお
 あたりまえに、ひとであることが辱められていて。

      s-スイセン20190316

 文芸評論家の粟津則雄氏は、齋藤さんのこの詩集に下記のことばを寄せている。

 齋藤貢さんのことばには、読む者の感情をことさらにかき立てるようなところはまったくない。彼は不思議な虚心をもって人や物や出来事をあるがままに迎え入れる。その凝視の底からある沈黙のしみとおったことばが身を起こすのである。

 今回はここまで。皆さま、お健やかにお過ごし願います。

石激 垂見之上乃 左和良妣乃 毛要出春尓 成来鴨 (志貴皇子)

 今年のタイトルは『万葉集』から。 原文は、石激 垂見之上乃 左和良妣乃 毛要出春尓 成来鴨 〔いわばしる 垂水(たるみ)の上の さ蕨(わらび)の 萌え出づる春に なりにけるかも〕。「岩を流れる滝のほとりのワラビが芽を出してくる春になったんですね」の意。

 今回の短歌は「セーラー服の歌人 鳥居」(岩岡千景著・KADOKAWA・2016年2月10日刊)から。「鳥居」は小学生の時に母が自殺、小学校中退、施設での虐待、ホームレス生活・・・、拾った新聞で字を覚えたという。歌人としては「鳥居」という姓だけを名乗り、名はない。

 いつの日も空には空がありました母と棺が燃える真昼間
 
 s-水温む20190305
 今回の写真は全て3/5、2日間続いた雨が上がった春日部・内牧公園。7時過ぎから約1万歩の散策。

 対岸に灯は点りけりゆわゆわと泣きじゃくる我と川を隔てて

 s-菜の花20190305
 ナノハナ。 (青字の植物名は全てS先輩からご教示いただいた。)

 風鈴を窓辺の箱にしまい終えその箱の崩れやすさを思う

 s-春の日射し20190305
 トウジュロ。

 標準語強いられるとき転校は味方のいない街へ行くこと

 s-春20190305
 オランダミミナグサ。

 あおぞらが、 妙に乾いて、 紫陽花が、 あざやか なんで死んだの

 s-枯葉と新葉20190305

 枯れた葉を踏まずに歩く ありし日は病に伏せる母を疎(うと)みし

 s-枯れ葉と新芽20190305

 書きさしの遺書、 伏せて眠れば 死をこえてあいにおいでと 紫陽花が咲く

 s-柿裸木20190305

 理由なく殴られている理由なくトイレの床は硬く冷たい

 s-果樹園の前20190305
 ニラ。

 爪のないゆびを庇(かば)って耐える夜 「私に眠りを、絵本の夢を」

 s-雨上がり⑧20190305
 コブシかな? 

 永遠に泣いている子がそこにいる「ドアにちゅうい」の腫れた指先

 s-雨上がり⑦20190305
 オオイヌノフグリ。

 朝焼けを坂の上から見送れば私を遠く避ける靴音

 s-兵馬俑20190305

 警報の音が鳴り止み遮断機が気づいたように首をもたげる

 s-雨上がり⑥20190305
 ナズナ。

  夜の海に君の重みを手放せば陶器のように沈みゆく首

 s-雨上がり⑤20190305
 ノボロギク。

 ひたひたと廊下を歩く ドアがあく イスに座って 被害を話す

 s-雨上がり④20190305
 スイバ。

 刃は肉を斬るものだった肌色の足に刺さった刺身包丁

 s-雨上がり③20190305

 海底にねむりしひとのとうめいなこえかさなりて海のかさ増す

 s-雨上がり②20190305

 壊されてから知る 私を抱く母をしずかに家が抱いていたこと

 s-雨上がり20190305

 大きく手を振れば 大きく振り返す 母が見えなくなる曲がり角

 s-テリハノイバラ20190305

 体温計くわえて窓に額つけ「ゆひら」とさわぐゆきのことかよ (穂村弘)

 「寒い冬の日。家の中の暖かい部屋で、体温計をくわえた病み上がりの子どもが窓に額をつけ、目を見開いて『ゆひら(ゆきだ)』と騒いでいる。それをそばで見ている父が『ゆきのことかよ、なーんだ』という顔をして眺めている・・・。そんな温かい家庭の光景が頭のなかに広がりました。そして、幸せな気持ちになりました。」(本文から) この一首との出会いで、鳥居は短歌に興味を持ったとのこと。

 洪水の夢から昼にめざめれば家中の壜まっすぐに立つ (吉川宏志)

  『一首の中に死と美しさ、そして違和感がない果てしない広がりを持っていることに感銘を受けた。』とも。

 鳥居は2012年、全国短歌大会で佳作入選。2016年、『キリンの子』を上梓、2017年、現代歌人協会賞を受賞。
 また、2012年ころより、自らが形式的には中学校卒業者であるが、実質的には小学校中退状態であること、義務教育を学び直したくとも学べない境遇の人がいることを伝えるため、取材などの公共の場ではセーラー服を着用している。鳥居のこの活動などを受け、2015年7月には文科省が形式卒業者を夜間中学校で受け入れるよう全国の教育委員会へと通知した。
 セクシャルマイノリティ向けに「虹色短歌会」、生きづらさを抱えた人のために「生きづら短歌会」などを行う。(Wikipediaより)

 さて、還太郎は農業簿記3級講座を無事終了。2018年度の試験問題に挑戦したら、100点満点⁉ 。但し、自宅でテキストと問題集を参考にしながら。電卓で加減乗除の計算をすると何度やっても合わないので、パソコンの計算ソフトも使用。
 果樹の育成中の経費は「育成仮勘定」という科目で資産として扱い、果樹の出荷を始めたら「減価償却費」としてコスト計上することなど、農業ならではの簿記を学び、楽しい講習だった。テスト本番は7/7。それまでには大方忘れてしまうのではと危惧・・・。

 皆さま、もう3月ですね。水も温み始めました。いい季節を楽しみましょう。どうぞ、お元気で。 

 
 
プロフィール

kantarou + 6

Author:kantarou + 6
畑や庭での作業を楽しんで、晩酌・早寝・早起きの毎日です。読書やドライブも好きです。

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