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銅臭児(どうしゅうじ)

「銅臭」どうしゅう)は銅銭のもつ悪臭。「児」は人を見下げた言い方。金銭をむさぼり、また、金銭によって官位を得るなど、金力にまかせた処世を送る者を卑しむ意。(今年のタイトルは漱石・草枕の難解熟語)

 今回の短歌は古泉千樫(こいずみちかし)。テキストは『わが愛する歌人 第四集』(有斐閣新書・1978年11月刊)。解説は吉田漱。 吉田は、古泉千樫を「高雅な明るさと悲哀 望郷のうたびと」と評している。

 古泉千樫〔明治19年(1886年)9月26日~昭和2年(1927年)8月11日〕。千葉県出身。明治43年千葉町教員講習所をでて小学校教員となる。明治37年18歳のとき「馬酔木」に短歌を投稿し、2首えらばれたのを機縁に伊藤左千夫に師事。明治41年蕨真によって下総より「アララギ」創刊。翌42年「アララギ」発行所が東京に移り左千夫によって刊行されたので本所緑町に移り、その編集を手伝い、茂吉、赤彦、憲吉、文明らとともに主要同人となる。

 君が目を見まくすべなみ五月野の光のなかに立ちなげくかも

 5月の野は光がみちわたり、山も木もみどりが生き生きとあかるい。そのなかにいて恋しい人に逢いたいと思いながら逢うことができず、明るいだけにいっそう歎きも深い。千樫の作品を読み進んでゆくと、こうした明るさの中にいての歎き、さびしさという感じに触れないわけはいかない。 

 s-新緑の山20180408

 ま昼まの路上に吾れの影くろしひとりまぶしく歩みつるかも

 この歌にも、何かに口ごもりうつむいている千樫の姿が見え隠れする。

 s-菜の花20180408
 ナノハナ。

 あが友の古泉千樫は貧しけれさみだれの中をあゆみゐたりき

 これは斎藤茂吉の歌。千樫が編集人であった時期、「アララギ」の度重なる遅刊に茂吉が憤激し電話で怒鳴ったという話や、千樫自身、歌集『川のほとり』巻末記に「言語道断懶惰なわたしは」と書いていることもあり、事務作業は不得意だったのか。

 s-梨かな20180408

 みんなみの嶺岡山の焼くる火のこよひも赤く見えにけるかも

 嶺岡山は生家の庭に立つと南側になだらかな牛の背のような形でそびえている。その山のゆるやかな傾斜が牧場になっていた。「焼くる火」はその草に放った火であり、夜になっても赤々ともえひろがるのが庭から見える。この歌は単に写生の歌ではない。

 s-白い花20180408
 クサイチゴ。

 山火事の火影おぼろに宵ふけて家居かなしも妹(いも)に恋ひつつ

 千樫の恋い思う人は人妻であり、子持ちで十歳も年上であった。その屈折しくぐもったなげきは嶺岡山の火の色に触発され、いっそう下燃えにひろがるかのようである。それでこそ前掲の歌は単なる風景写生の作品以上に深い哀調がにじみ出てくるようだ。

 s-赤い葉20180408
 アカメガシワ。

 吹く風に椎の若葉の日のひかりうち乱りつつありてがなくに

 千樫はその後、自分では「世にそむき」とうたいながら、その恋愛は成就し結婚した。後年亡くなる前の年、病をおしてこのふるさとの山に登る。

 二つ山三角標のもとに咲くすみれの花をまたたれか見む
 s-新葉⑤20180408
 ヌルデ。

 夜は深し燭を継ぐとて起きし子のほのかに冷えし肌のかなしさ 

 これは、いまではその相聞の相手が原阿佐緒(はらあさお)であることがわかっている。阿佐緒は明治42年に「女子文壇」に投稿し、与謝野晶子に認められ天賞をうけた。新詩社にも入り、43年には「スバル」にも参加。阿佐緒は大正2年、第一歌集『涙痕』を刊行している。
 宮城県の旧家に生まれるも若くして父を失い、結婚するはずであった養嗣子の若死に、日本女子美術学校在学中に妻子ある男性にだまされて自殺を図るなど、精神肉体ともに傷だらけになる。『涙痕』はそれから生まれた一冊であった。世評も高く、才にはじけ、若くて美貌、悲劇的な生活、また寄るべない孤独の歌の数々といった印象が多くの人与えられた。千樫も批評でこれをとりあげている。

 s-新葉④20180408
 アオキ。

 ぬばたまの夜の海走る船の上に白きひつぎをいだきわが居り
 
 そんな頃、千樫は生まれ4ヶ月の次女を失う。子をなくした千樫も苦しかったが、阿佐緒の方もなやみ、千樫との間に終止符をうつべく嫁いでいった。

 s-新葉③20180408
 カエデ。 

 夜寒く帰り来ればわが妻ら明日焚かむ米の石ひろひけり
  
 s-新葉②20180408
 ツタウルシ。

 帰りきて雨夜の部屋に沈丁花匂へば悲しほてる身体に

 前掲のような庶民生活の哀感を歌ったりもするが、阿佐緒との恋愛感情は作品の間にみえかくれしている。

 s-新葉20180408
 アオキ。

 切にして人の思ほゆ闇ながら若葉の森のゆらぐを見れば

 s-紫の花②20180408
 タチツボスミレ。

 秋さびしもののともしさひと本(もと)の野稗の垂穂(たりほ)瓶(かめ)にさしたり

 s-紫の花20180408
 ムラサキケマン。

 うつし世のはかなしごとにほれぼれと遊びしことも過ぎにけらしも  
 
 s-桜20180408
 ヤエザクラ。

 雹まじり苗代小田にふる雨のゆゆしくいたく郷土(くに)をし思ほゆ

 s-新緑の山②2018408

 昨日(4/7)、いつもの本屋さんで『本所おけら長屋』(畠山健二・PHP文芸文庫)の1と2を買った。落語か講談の名人の話芸のようなノリの良さ。16時頃に再度本屋さんに行き、3~10を買う。既に5まで読了。たぶん就寝前に6も読み終えると思う。こんなスピードで読むのは北方謙三の『水滸伝』・『楊令伝』以来かも。掃除・洗濯、山歩き、通院、洗車、クリーニング屋さん、飲・食料買い出し、ブログ作成等々、充実の週末・・・。体重もUNDER80が射程距離に入ってきた。
 皆さま、お元気にお過ごし願います。

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お久しぶりです(^^)
冬の間は体調不良でやっと元気になってきたところです
還太郎さんはお元気そうでヨカッタ(*^-^*)
またお邪魔させて下さいねヽ(´ー` )ノ

田植え間近

エル様

お久し振りですね。体調が戻ったとのこと、何よりですね。
先日、圏央道を千葉方面に向かったのですが、道路の両側に3反歩はあろうかという大きな田んぼが広がり、代掻きがあちこちで行われていました。
実家の田んぼは親戚におまかせで、田植えも10年以上やっていません。それでも田植え時期になると、血が騒ぎます。畦道で食べたカツオの焼き浸し、タケノコ煮等々、懐かしい思い出です。

お体に気を付けて、農作業を頑張ってください。

還太郎 拝

ピアノを弾く「すたあ」さん?

おはようございます。
文面からすると、私が存じ上げている方のようですが、
ヒントが少なくて・・・。

私は、おかげさまで元気に過ごしております。
ことに最近は、毎日のように会社の植栽の剪定をしていますので、
腹回りも大分すっきりしてきました(平均的な方に比べれば
まだまだ太目…。)

発表会、頑張ってください。

還太郎 拝
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kantarou+5

Author:kantarou+5
週末の近郊里山徘徊を楽しみつつ、足腰の衰えを防止しています。読書やドライブも好きです。

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