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今さらに 雪降らめやも かぎろいの 燃ゆる春へと なりにしものを

 今年のタイトルは『万葉集』から。この歌の意は、「陽炎(かげろう)の燃え立つ春になったのに、なんで今さら雪なんか降るのだろう、もう雪なんてたくさんだよ」(作者不詳)。

 今回の短歌は『ぼくの短歌ノート』(穂村弘、講談社、2015年6月15日刊)から。不思議な感覚の歌、見たままの歌、笑ってしまう歌などなど。

 よくわからないけど二十回くらい使った紙コップをみたことがある (飯田有子)

 s-ウメ20190203
 
 あのこ紙パックジュースをストローの穴からストローなしで飲み干す (盛田志保子)

 s-ウメ20190204

 10分後賞味期限が切れる肉冷凍庫に入れて髪乾かす (田中有芽子)

 s-ウメ②20190204

 昼なのになぜ暗いかと電話あり深夜の街をさまよふ母より (栗木京子)

 s-サザンカ20190204

 父のなかの小さき父が一人づつ行方不明になる深い秋 (小島ゆかり)

 s-スイセン20190204

 銀杏を食べて鼻血が出ましたかああ出たねと智恵子さんは言う (野寺夕子)

 s-ボケ20190203

 「オレオレ」とまた電話あるは金持ちの様なわが名の所為なのだろう (大成金吾)

 s-ホトケノザ20190204

 あ、http://www.jitsuzonwo.nejimagete.koiga.kokoni.hishimeku.com (荻原裕幸)

 s-モクレン20190204 (1)

 コマーシャル挿入されてわれは消ゆ生命保険に笑む小家族 (大塚寅彦)

 s-ロウバイ20190203

 月を見つけて月いいよねと君が言う  ぼくはこっちだからじゃあまたね (永井祐)

 s-ロウバイ20190204

 「おぢいちゃんしぬまでながいきしてください」誕生祝いは孫からの文 (鉄本正信)

 s-枯れ花20190204

 どうこうと思うなけれど曾孫は「ばあちゃん、男か女か」と聞く (香城清子)

 s-枯れ花②20190204
 
 お一人様三点限り言われても私は二点でピタリと止めた (田中澄子)
 
 s-枯れ椿20190204

 「扉のむかうに人がゐるかもしれません」深夜のビルの貼紙を読む (清水良郎)
 
 s-枯草20190204

 えーえんとくちからえーえんとくちから永遠解く力を下さい (笹井宏之)

 「エーエンと口から」鳴き声がしているのかと思ったが、数回読むと「永遠解く力」が繰り返されていると気づく。

 s-枯葉20190204

 白鳥はふっくらと陽にふくらみぬ ありがとういつも見えないあなた (渡辺松男)

 s-白鳥20190204
 近くの蛭田(びんだ)川にて。最近は白鳥も飛来している。

 ねたらだめこんなところでしんじゃだめはやぶさいっしょにちきゅうにかえろう (田中弥生)

 満身創痍で地球に帰還した、小惑星探査機「はやぶさ」への呼びかけの歌。

 s-野鳥と鯉20190204
 同じく蛭田川。鯉と野鳥が共存。水の色も柔らかくなってきた。

 北浦和 南浦和 西浦和 東浦和 武蔵浦和 中浦和と無冠の浦和 (沖ななも)

 s-葉20190204

 誤植あり。中野駅徒歩十二年。それでいいかもしれないけれど (大松達知)

 s-新葉20190204

 いつの日のいづれの群れにも常にゐし一羽の鳩よ あなた、でしたか (光森裕樹)

 s-寒桜③20190207
 寒桜かな。@館山市。

 妻を得てユトレヒトに今は住むといふユトレヒトにも雨降るらむか (大西民子)

 著者の穂村弘は、作者(大西)に近い人から、「ユトレヒト」は虚構、と聞かされショックを受けたとのこと。曰く「かつての夫の再婚が事実の場合、地名だけをそこまで劇的に変えてしまうことはちょっと考えられない。そう考えてしまった私は、現実をドラマ化する大西ワールドの凄みを改めて痛感させられた」。

 s-寒桜②20190207

 雨の県道あるいてゆけばなんでしょうぶちまけられてこれはのり弁 (斉藤斎藤)
 
 s-寒桜20190207

 硝子戸に鍵かけてゐるふとむなし月の夜の硝子に鍵かけること (葛原妙子)

  s-富士山20190208
 東京湾アクアラインの「海ほたる」から富士山を望む。
 
 畳のヘリがみな起ち上がり讃美歌を高らかにうたふ窓きよき日よ (水原紫苑)

 いわきは6日は雨だった。今年初めての雨では? 明日は雪との予報。雨でも雪でも降ってくれないと、畑がカラカラでタマネギの苗が育たない。

 皆さま、温かくしてお過ごし願います。


 以下、おまけを二つ。一つ目は『僕の短歌ノート』で読んだ塚本邦雄の随筆。

 私の家を含む東大阪市一部の電話は三年ばかり前に局番が變わった。(略)新局番は七四五、これと六二六二を組合わせて、舊番號も霞むばかりの名作を捏(でつ)ち上げねばならぬ。長考十分、すなはちでき上つたのは「梨五つ浪人六人國を出る」である。

 頃は元祿、さる大名の姫君が天竺(てんぢく)渡りの梨の木に始めて生つた實を、日頃寵愛の文武容色いづれ劣らぬ六人の若侍に與へようとしたが、生懀その數五つ。ここに端を発して御家騒動が起る。波瀾萬丈、紆余曲折の後六人は祿を棄てて出奔する。

 いとも舊めかしいロマンスで恐縮ながら、「國を出る」とは、「浪人六人=六二六二」までダイヤルし終ると、お呼び下さった私が電話口に出る、すなはち「邦雄出る」が懸けてあるのが味噌。ありの実・浪人・亡命から成る三題噺は、各人の好みでいかやうにも創作しつつ電話いただきたいものだ。
 (「菜葉煮ろ煮ろ」から。)

二つ目。 乙川優三郎 『太陽は気を失う』 (文春文庫 2018.9.10刊)から。

 常磐線が大津港から北へ県境を越えて間もない小さな駅の近くに細い川の流れがあって、土手の道を歩いていくと海であった。途中には百年は持つと言われた実家があり、海辺には発電所と墓地があった。私の帰郷の目的はひとり暮らしの老母を見舞い、一月前に亡くなった知人の墓へ参ることであった。

 短編14話の文庫本の第一話の冒頭が上記の文章。いま私がいる街である。この日の午後、主人公は東日本大震災に遭遇する。私も、その日はいわきに居たので、身につまされつつ読了。乙川優三郎は、オール讀物新人賞、時代小説大賞、山本周五郎賞、直木賞、中山義秀賞、大佛次郎賞、芸術選奨文部科学大臣賞(「太陽は気を失う」で)等々を受賞。

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還太郎+7

Author:還太郎+7
畑や庭での作業を楽しんで、晩酌・早寝・早起きの毎日です。読書やドライブも好きです。

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